ベルナルディーニ&ゼフィーロ・バロック・オーケストラによるフックス:歌劇《アリアンナの冠》
ウィーン音楽史上の大御所フックス、最晩期の至芸を充実演奏陣で!
ウィーン古典派の三大作曲家が対位法を学んだ理論書『パルナスス山への階梯』の著者で、三代にわたる神聖ローマ皇帝に楽長として仕えた大作曲家フックス。その晩年の知られざる傑作音楽劇が、欧州古楽シーン最前線をゆく演奏陣によって全曲録音されました。
バッハやヘンデルより四半世紀早く、A.スカルラッティやパーセルなどと同じ頃に生まれたフックスは1690~1710年代が活動全盛期でしたが、1723年プラハでの主君の戴冠式を祝う《権勢と貞節》を書きながら脚を悪くして随行できず半ば引退状態に。その中で1726年の皇妃誕生日を祝うべく書かれた《アリアンナの冠》は、数々の木管・金管と打楽器が加わる充実編成の楽団と合唱を従え、5人のソリストが旋律美豊かな歌を交わしてゆく一種のセレナータ。
多声処理のたくみさや種々の楽器を活かして効果的な書法を繰り出す引き出しの多さはさすが巨匠の至芸というほかなく、ヴィヴァルディやヘンデルら当時の現役世代にも比肩しうる緩急自在の音楽内容は、フックスが理論好みの書斎派などではなく常に最前線の現役気質を失わなかったことを強く印象づけてくれます。
物語は怪物ミノタウロスを退治した英雄テーセウスがナクソス島に置き去りにしたアリアンナ(アリアドネ)を酒神バッコ(バッコス)が慰め、傍らで王子ペレオと海の精テーティが結ばれるというもの(北半球の星座「かんむり座」はこの作品の表題に示された冠に由来)。
キーラントやピッチニーニらシーン最前線の名歌手たち、頼もしくも切れ味抜群なゼフィーロの古楽器演奏に加え、アーノンクールとの共演歴でも名高いシェーンベルク合唱団の参加も頼もしいところ。
充実した作品解説(英・独・伊語)と併せ、ウィーン音楽史を再訪したくなる刺激豊かな新録音と言ってよいでしょう。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
ヨハン・ヨーゼフ・フックス(1660-1741):音楽祝典劇《アリアンナの冠》K 317/FuxWV II.2.20(1726年ウィーンにて初演)
台本: ピエトロ・パリアーティ(1665-1733)
【演奏】
ヴェネレ(美の女神ウェヌス)…モニカ・ピッチニーニ(ソプラノ)
アリアンナ(クレタの王女アリアドネ)…カルロッタ・コロンボ(ソプラノ)
テーティ(海の精テティス)…マリアンネ・ベアーテ・キーラント(アルト)
バッコ(酒の神バッコス)…ラファウ・トムキェヴィチ(カウンターテナー)
ペレオ(アイギナの王子ペレウス)…リ・メイリ(カウンターテナー)
アルノルト・シェーンベルク合唱団
ゼフィーロ・バロック・オーケストラ(古楽器使用)
アルフレード・ベルナルディーニ(指揮)
【録音】
2022年6月28日、ヘルムート・リスト・ハレ、グラーツ、オーストリア
収録時間: 68分
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2023年08月17日 00:00