WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.289
ヴィンス・ガラルディ『黒いオルフェ』(1962)
ヴィンス・ガラルディ(p)
モンティ・バドウィッグ(b)
コリン・ベイリー(ds)
1961年11月、1962年2月、サンフランシスコにて録音
曲目:
01.オルフェのサンバ
02.カーニヴァルの朝
03.オ・ノッソ・アモール
04.ジェネリーク
05.風にまかせて
06.ムーン・リヴァー
07.アルマヴィル
08.シンス・アイ・フェル・フォー・ユー
【アルバム紹介】
1.スヌーピーの音楽で知られた名ピアニストの1962年作
2.映画『黒いオルフェ』 の楽曲、自作のヒット・チューンも含む選曲
3.相性バッチリのベース、ドラムスとのセンス抜群のトリオ
今回ご紹介するピアニストは、ジャズの世界ではちょっと異色な存在の一人です。
ビバップ、ハードバップといったモダン・ジャズのスタイルとはかけ離れたどこかポップなタッチのピアノに感じられる、そんな特徴が魅力です。ピアニストの名はヴィンス・ガラルディです。
サンフランシスコに生まれたヴィンス・ガラルディは50年代初めにヴィブラフォン奏者カル・ジェイダーのグループのメンバーとしてレコーディング等に参加し、その後自身のトリオを結成し、地元であるサンフランシスコで活動を始めました。
なんといってもそのキャリアの中でよく知られているのは、60年代に入ってからスヌーピーやチャーリー・ブラウンの『ピーナッツ』の音楽を担当したことです。軽快な“ライナス・アンド・ルーシー”など、数々の名曲を世に送りだしました。
本作は『ピーナッツ』の音楽で広く世に知られる以前、1962年にリリースしたアルバムで、映画『黒いオルフェ』からルイス・ボンファ、アントニオ・カルロス・ジョビンのナンバー、そしてヘンリー・マンシーニの名曲“ムーン・リヴァー”などを取り上げた内容です。中でも自作の“風にまかせて”(原題“Cast Your Fate to the Wind”)はガラルディのオリジナルであり、大ヒット・チューンで、1963年にグラミーを受賞した1曲です。
メンバーはウェスト・コーストのベーシスト、モンティ・バドウィッグと、イギリス生まれのドラマー、コリン・ベイリーという顔ぶれのトリオで相性バッチリの演奏が聴けます。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
軽快にハネる4ビートの“オルフェのサンバ”。
映画『黒いオルフェ』は1959年のフランス・ブラジル・イタリア映画で、音楽を担当したのが、ブラジルの作曲家/ギタリストのルイス・ボンファ、そしてボサノヴァの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビン。
この“オルフェのサンバ”はルイス・ボンファの作曲によるもので、『黒いオルフェ』のサントラ盤ではギターによる演奏が聴けますが、ここでは、ピアノ・トリオの軽快な演奏で楽しむことができます。
曲はまず躍動するビートを刻むドラムスとともに、ベースがテーマ・メロディを奏でます。ワン・コーラスが過ぎたところで、唐突にピアノが入ってきて、リズムは4ビートになり、再びテーマ・メロディを奏でてゆきます。テーマの提示が終わると、ピアノ・ソロに移りますが、活きのいいソロ・フレーズを次々と繰り出し、ハッピーな雰囲気で盛り上げてゆきます。やがて強弱のダイナミクスをコントロールしたプレイで聴かせるセクションを経て、テーマが回帰、するとリズムは冒頭の躍動感あふれるビートを再現、そしていつまでも続いていくかのような展開のまま、フェイド・アウトで曲を終えます。
ヴィンス・ガラルディのピアノはコテコテのジャズというより、センス抜群のスインギーなスタイルが特徴で、万人受けするタイプと思われ、それが人気の秘密だったのでしょう。また、その風貌も大きな黒縁眼鏡に、漫画チックな口ひげを生やし、独特の存在感がありました。本作のあと、『ピーナッツ』の音楽を手掛け、それがライフワークのようになってゆきますが、1976年に心臓発作のため47歳で亡くなっています。
国内盤SHM-CD
タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年08月16日 10:00