WEEKEND JAZZ ~週末ジャズ名盤探訪 Vol.293
ロイ・ハーグローヴ『ダイアモンド・イン・ザ・ラフ』(1990)
ロイ・ハーグローヴ(tp)
ラルフ・ムーア(ts) on 1,5,7,9,10
アントニオ・ハート(as)
ジェフ・キーザー(p) on 1,5,7,9,10
ジョン・ヒックス(p) on 2~4,6,8,11
チャールズ・ファンブロー(b) on 1,5,7,9,10
スコット・コリー(b) on 2~4,6,8,11
アル・フォスター(ds) on 2~4,6,8,11
ラルフ・ピーターソン Jr(ds) on 1,5,7,9,10
1989年12月、ニューヨークにて録音
曲目:
01.プロクラメイション
02.ルビー・マイ・ディア
03.ニュー・ジョイ
04.コンフィデンシャリティ
05.ブロスキー
06.ウィスパー・ノット
07.オール・オーバー・アゲイン
08.イージー・トゥ・リメンバー
09.プリモニション
10.BHG
11.ウィー
【アルバム紹介】
1.名トランペッター、ロイ・ハーグローヴの初リーダー作
2.若干20歳ながら、卓越したプレイで魅了
3.楽曲はオリジナルからスタンダードまで多彩
前回はトランペッター、ウィントン・マルサリスのデビュー作をご紹介しましたが、今回もトランペッターの初リーダー作を取り上げます。世代的にはウィントンの次の世代にあたり、80年代終わりごろに登場した名トランペッター、ロイ・ハーグローヴです。
1969年生まれですので、本作のレコーディング時は弱冠20歳にもかかわらず、卓越したプレイで魅了するあたり、90年代以降のジャズ・シーンを牽引する素養が十分なニュー・ジェネレーションのジャズ・ミュージシャンだったことが伺えます。
参加ミュージシャンはロイと同世代の若手から中堅、そしてベテランまでが顔をそろえ、若きトランペッターの初リーダー作を盛り上げています。大きく分けて、2種類のバンドを曲によって使い分け、 楽曲も自身のオリジナルやメンバーのオリジナルもあり、その他、セロニアス・モンクやベニー・ゴルソンのナンバー、スタンダードなどで構成されています。
【スタッフのつぶやき:この1曲を必ず聴いて下さい】
バラードでしっとり、名スタンダード“イージー・トゥ・リメンバー”。
初リーダー作ゆえ、1曲1曲の演奏にどこか力が入るのは誰もいっしょと思われますが、そんな中にあって、サラっと奏でられるバラード・ナンバーがあると印象に残るものです。
この演奏はそんなムードに満ちたものになっています。
“イージー・トゥ・リメンバー”は1935年にビング・クロスビーのミュージカル・コメディ『ミシシッピ』のために書かれたナンバーですが、その後数々のシンガーやミュージシャンによって取り上げられ、よく知られたスタンダード・ソングになりました。ジョン・コルトレーンの人気アルバム『バラード』での名演が有名です。
ここでのロイ・ハーグローヴはワン・ホーン・カルテットでの演奏になっており、歌心あふれるバラード・プレイを聴かせています。
頭からロマンティックなテーマ・メロディが奏でられ、抑制のきいたトーンでのトランペットの響きが秀逸です。テーマの提示が終わると、そのままトランペット・ソロへと移ります。情感を込めたプレイで、楽曲の持つ雰囲気を壊すことなく、スムーズにソロが進行してゆき、途中やや盛り上がるところではテンポ・アップされ、表情豊かに演出します。続いて、ベテランのジョン・ヒックスのピアノ・ソロとなり、ここでは渋く味のあるプレイで魅了します。やがてテーマへと回帰し、そのまま、自然な流れでエンディングへと向かいます。演奏を終えたあとの余韻の残り方もいい感じです。
ロイ・ハーグローヴは初リーダー作である本作のリリース以降、90年代に入って多くのジャズ・ミュージシャンと共演し、様々なキャリアを積み、充実した活躍ぶりを見せました。2000年代に入るとジャズ以外のジャンルにも手を伸ばし、R&B/ヒップホップ・プロジェクトであるRHファクターでの活動で、新たな一面を見せました。その後本来のジャズ路線に再び返り咲き、自身のクインテットやビッグバンドで秀作をリリースしましたが、腎不全により、長年に渡る透析治療が続き、2016年に心不全により亡くなりました。まだ49歳という若さでした。
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タグ : WEEKEND JAZZ
掲載: 2024年09月13日 10:00