「名作コンシェルジュ」掲載!セルジオ・フィオレンティーノ『ザ・レガシー』26枚組~完璧な作りと大らかさ 知られざるピアニストの録音集成

巨匠ミケランジェリが「私以外の唯一のピアニストである」と評した、セルジオ・フィオレンティーノ(1927~98)の録音をまとめた『ザ・レガシー』が2025年7月13日(日)日経日曜版の鈴木淳史氏による名物コラム「名作コンシェルジュ」で紹介されました。
晩年に注目されたピアノ 完璧な作りと大らかさ(鈴木淳史氏評)
輸入盤盤CD26枚組
鈴木氏はフィオレンティーノを「とても魅力的な音楽を奏でるのに、あまり表舞台に出てこない演奏家」と紹介し、その理由を「飛行機事故に巻き込まれ、演奏活動を縮小。もっぱら音楽院の教師として過ごした。還暦を過ぎて音楽院を退職後、コンサート活動に復帰した経歴をもつ」ためと説明。このBOXは、晩年の演奏が評判を呼んでベルリンで録音された10枚に、若いころの録音を組み合わせた26枚組で、1枚目のシューマン「幻想曲」の演奏を「じつに落ち着いた運びで、バランスは完璧情熱も失わず、気高さとスケール感をもった第1楽章。第2楽章では、それぞれのエピソードの縁取りがくっきりと描かれる。終楽章は、サバサバとした運びのなかで、主旋律とそれを引き立てる対旋律がしっとりと絡み合う。そして、音の重なりによって作り出される色彩の移ろいの妙」と絶賛。シューマンの「謝肉祭」でも「各曲がしっかりとデザインされていて、テクニックも目覚ましい。それでいて、全体に大らかな雰囲気が宿っているのが素敵だ」と高評価。リスト作品は「澄み切っていて立体的」、フランス音楽もユニークで「ほのめかしなしに、すみずみまで精細に描き尽くすドビュッシー」などミケランジェリとのスタイルの近似を説明。ミケランジェリの「細やかすぎる神経が前面に出た演奏」との違いは「どっしりとした悠揚な構え。それが音楽にも温かみを与えてくれるのだろう」と結論付けています。
(タワーレコード)
※ 収録曲目は、上記商品ページの「収録内容」を確認いただければ幸いです・

ミケランジェリによる代表的なディスク
国内盤
ピアニスト。1920年イタリア、オルツィヌオーヴィ生まれ。1995年6月12日、スイスのルガーノにて没。4歳から音楽を学び始め、ヴェルディ音楽院ではヴァイオリンも習得。卒業後ソロ活動を始めるが、並行して医学も学んでいる。39年第1回ジュネーヴ国際コンクールで1位を獲得して注目を集め、マルティーニ音楽院の教授に就任。戦後は46年ロンドンでセンセーショナルなデビューを果たした。独特なカリスマ性を備えた完璧主義者で、その演奏は妥協を許さない芸術理念に支えられており、そのために録音嫌いとしても有名であった。また、コンサートのキャンセルの多さでも知られていた。ピアノの調律にもひときわ神経質で、世界中どこのコンサートにも、愛用のスタインウェイのコンサート・グランドと、専属の調律師を同伴した。一方、教育活動には熱心で、各地で教鞭をとっている。1964年、故郷のブレーシア国際ピアノ・コンクールを創始し、自ら芸術監督を務めた。若き日にコルトーをして「新しいリストの誕生」と言わしめたように、ロマン派の演奏に優れた才能を発揮したが、ドビュッシーを初めとする印象派の作品にも豊かな霊感を感じさせた、20世紀を代表するピアニストであった。
2012/08/30 (2015/01/16更新) (CDジャーナル)
カテゴリ : ニュース | タグ : ボックスセット(クラシック)
掲載: 2025年07月14日 12:00