【追悼】サー・ロジャー・ノリントン 指揮者 91歳
「古楽演奏」のパイオニアで、モダン・オーケストラに古楽奏法をもちこんだ「ピュア・トーン」で聴衆を魅了した指揮者のサー・ロジャー・ノリントンが2025年7月18日に亡くなりました。91歳でした。謹んでご冥福をお祈りいたします。
ノリントンは1934年3月16日、英国オックスフォード生まれ。ケンブリッジ大学で英文学を専攻し、カレッジの聖歌隊に所属。王立音楽院でエイドリアン・ボールトから指揮法を学びました。1962年にシュッツ合唱団を組織し、1969年新設のケント・オペラの音楽監督に就任し、15年間で40作以上のオペラをとりあげ、数々の実験的試みを行ないました。1978年にピリオド楽器&奏法によるロンドン・クラシカル・プレイヤーズを組織し、1750~1900年に生まれた作品の演奏を刷新し、クラシック音楽界にセンセーションを巻き起こしました。同時にベルリン・フィルやウィーン・フィルを始めとするモダン・オーケストラにも多く客演し、オペラにも積極的に関わりました。1998年から2011年までシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者となり、ライヴにCDに活躍し、ビブラートを抑えた「ピュア・トーン」の演奏は多くの聴衆を魅了しました。2021年11月、ロイヤル・ノーザン・シンフォニアとの演奏を最後に指揮活動から引退。2025年7月18日、イングランド南西部エクスター近郊の自宅で亡くなりました。
(タワーレコード)
古楽器オーケストラ時代の録音集成『エラート録音全集』45枚組
1978年にピリオド楽器オーケストラであるロンドン・クラシカル・プレイヤーズを設立。1986年からはじまったベートーヴェンの交響曲チクルスから、旧EMIと専属契約を結び録音を開始。ノリントンの演奏には常に新たな新発見・解釈があり、ベートーヴェンとの歴史的な情報に基づくメトロノームの速度指示に注目し演奏したことは多くの議論を呼び起こしましたが、ノリントンは『私たちが行うのは「本物」ではありません。私自身、その言葉を使うことはありません。情熱がすべてです』と、述べています。
このボックスでは、約10年のロンドン・クラシカル・プレイヤーズとの録音全て。そして1992年リンカーン・センターで行われた「ロッシーニ生誕200年記念ガラコンサート」のライヴ録音、ワーナークラシックスへのダニエル・ホープとの共演アルバム、カウンターテナーのデイヴィッド・ダニエルズとの共演アルバムも追加されています。
ウィーン・フィルとの共演盤
新世紀を迎えた2000年、マリス・ヤンソンスのキャンセルを受けてノリントンがウィーン・フィルと共演した際のライヴ録音です。この頃のウィーン・フィルは積極的に新しい演奏法に挑んでいた時期でもあり、ガーディナーやアーノンクールといった古楽系指揮者を良く迎えていました。このノリントンとの共演でも指揮者の個性をウィーン・フィルが楽しみながら音楽に昇華しており、両者の持ち味が絶妙に溶け合った美しくも刺激的な空前の演奏が繰り広げられています。
チューリヒ室内管弦楽団との共演盤
2011年からチューリッヒ室内管弦楽団の首席指揮者を務めたノリントンはソニー・クラシカルとベルリン・クラシックスに数枚の録音を行い、最晩年の境地を刻み込みました。
シュトゥットガルト放送交響楽団とのCD
1997年にノリントンの病気によりロンドン・クラシカル・プレイヤーズが解散(エイジ・オブ・エンライトゥンメント管弦楽団に吸収)され旧EMIとの契約は終了となりましたが、1998年にシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者に就任。古楽演奏のスタイルをモダン・オーケストラに応用し、ビブラートを抑制した美しい響き「ピュア・トーン」で一世を風靡しました。
カテゴリ : ニュース
掲載: 2025年07月22日 20:00