ジェラール・プーレ、豊平青&クレド交響楽団『ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77』発売中
掲載: 2026年08月24日 18:30
米寿を迎えたフランスの至宝ジェラール・プーレ
遂に最も得意とするブラームスの協奏曲をセッション録音
愛弟子、豊平青(しょう)と彼が創設したクレド交響楽団のデビュー盤
国内盤CD
2026年8月12日に米寿を迎えたフランスの至宝、ジェラル・プーレが最も得意とするブラームスのヴァイオリン協奏曲を遂に録音!三大ヴァイオリン協奏曲録音の完結編でもあります。共演はプーレの愛弟子、これがCDデビューとなる新鋭指揮者の豊平青(しょう)と、彼が創設したクレド交響楽団。入念なセッション録音でその芸術的精華を世に問います。
(タワーレコード 商品統括部 板倉重雄)
【曲目】
ブラームス ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
1.ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 第1楽章
Violin Concerto in D major Op.77 Mov.1 Allegro non troppo
2.ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 第2楽章
Violin Concerto in D major Op.77 Mov.2 Adagio
3.ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 第3楽章
Violin Concerto in D major Op.77 Mov.3 Allegro giocoso,ma non troppo vivace -Poco piu presto
【演奏】
ジェラール・プーレ(Vn)
豊平 青(Cond)
クレド交響楽団
Recording Producer: Yu Takagi (Takagi Klavier Inc.)
Recording Engineer: Toshiyasu Shiozawa (NIPPON COLUMBIA CO.,LTD.)
Assistant Engineer : Eri Kushimoto(NIPPON COLUMBIA CO.,LTD.)
Recording Director: Yori Kawashima
Photographer : Yuki Ishibashi
Booklet Design: Sumiko Shibata
Coodinator: Miwa Kano (Takagi Klavier Inc.)
2019年8月17日(土) クレド交響楽団第2回演奏会(CDとは別のライヴ映像)
私は2019年8月17日(土)に、ジェラール・プーレのブラームス聴きたさに、まったく知らなかった豊平青(当時20歳!)とクレド交響楽団の演奏会に行きました。そして、プログラム後半のプーレのブラームスはもちろん、前半1曲目のモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》序曲の演奏に、まさに「雷に打たれたような」衝撃を受け、以来、彼らの演奏を追いかけるようになりました。ジェラール・プーレも毎年のようにクレド交響楽団に出演し、「年齢に逆行するような」艶やかさと瑞々しさと、年輪を増した妙技を聴かせています。その精華が初めて今回のCDに結実しましたが、YouTubeに私が初めて聴いた演奏会の映像が公開されていますので、当時の私の感想とともにお届けいたします。
若き日の小澤征爾を思わせる率直明快な棒さばき、
ピッチと音価の揃った歯切れの良いアンサンブル、
冷静と情熱がせめぎ合った充実の演奏内容!
昨日、8月17日(土)は勝どきの第一生命ホールへ、アマチュアのクレド交響楽団第2回演奏会を聴きに行きました。想像を遥かに超えるハイレベルの合奏、率直明快な演奏、満ち溢れる音楽愛に打たれました。客席は満員でしたが、私のFBのお友達の方々はあまりいらっしゃらなかったようなので、その素晴らしさを伝えたい気持ちに駆られました。
この演奏会に行こうと思ったきっかけは、後半に81歳の世界的巨匠ジェラール・プーレが出演して、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏することでした。なぜプーレが出演することになったのか。プログラムには、今日の指揮者、1999年生まれで慶應大学2年在学中の豊平青(とよひら・しょう)が、高校時代にプーレにヴァイオリンの指導を受けたことがきっかけで、共演が実現したとありました。そして、このクレド交響楽団も、高校3年生だった豊平青が指揮したときの慶応高校ワグネル・ソサエティ・オーケストラ・メンバーが母体となっていることを知りました。
プログラム前半はモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲とメンデルスゾーンの劇音楽「真夏の夜の夢」序曲という、あまりにも有名で、かつ指揮者の内容把握、オケのアンサンブルの試金石となるような作品です。演奏を聴く前は、こんなにアラが目立ちやすい曲をよく持ってくるな、と感じていました。
若い楽員たちが席に着き(47人編成、第1ヴァイオリンは10人、通常配置)、チューニング後の静寂と緊張感を経て、颯爽と登場した20歳の豊平青は、スマートな好青年と言った風貌。ところが、指揮台に上がるや指揮棒一閃!モーツァルトが描いたドン・ジョヴァンニの地獄落ちの音楽が、ものすごい憤怒のエネルギーとともに鳴り響き、全く驚かされました。この青年たちは、音楽を深く理解しているし、それを実際の音にする技術とアンサンブルを持っていました!特に弦楽器群のピッチの揃った、細かい音形の揃った、歯切れよく、深い音色美を伴った合奏(皆良い楽器を使っているのでは?)は、アマチュアのレヴェルを遥かに超えたものでした。指揮者の豊平青の棒さばきも、まことに明快、率直。まるで若い頃の小澤征爾を思わせる鮮やかな指揮ぶりです。彼の指揮姿そのもの、情熱的でいて情に溺れない進行、そして彼の棒に敏感に反応し、細心の注意でアイコンタクトを交わしながら瑞々しい合奏を響かせるオケの面々に、すっかり魅了されました。
2曲めはメンデルスゾーン。妖精たちを描いた繊細極まりない音楽で、指揮者、オケとも、演奏家としての資質そのものが問われる一曲です。48人編成となり、メンバーもかなり入れ替わっての演奏でしたが、前曲と変わらぬ弦楽器のピッチと音価のピタリと揃ったアンサンブルにまず驚愕。豊平青の明快な棒さばきの下、メンデルスゾーンらしい軽やかさ、繊細さ、リズム、疾走感が清々しく音化されて行きます。また、音楽のフォルムを保ちながら、緊張と弛緩が絶妙に交代していた事も特筆されます。
後半はブラームスのヴァイオリン協奏曲。オケは60人編成(第1ヴァイオリンは12人、通常配置)。ソリストのジェラール・プーレが現れて、全員でチューニング後、演奏開始。オケだけの主題呈示、ブラームスらしい質実剛健、精神美に溢れた壮麗な音楽が、各楽器群の清廉な気迫に満ちた合奏が積み重なり、見通しよく、立体的に鳴り響きました。そしてプーレの登場。楽譜を見ながらの演奏は、他のソリストたちが往々にして譜面のスラーやスタッカートを無視して演奏することへの批評でもあったのでしょう。それ以外にも、「上げ弓」「下げ弓」や「ため」の工夫など、長年の研究実践から得た知恵も随所に感じられました。
しかし、このようなことよりも私の胸に響いたのは、プーレ独特の「音」でした。背後で弾いているヴァイオリン群と同じ形でありながら、まるで「音」が違うのです。単に「名器の音」というのともまた違う、楽器がヴァイオリンであることさえ忘れさせる、プーレの「心」そのもの、「人生」そのものが鳴り響いていました。それは、まるで指揮者、楽員たち、聴衆の一人一人に語りかけるかの如く、優しく、柔らかく、高弦は憧れに満ち、低弦は包容力に満ちた「音」でした。プーレといえども、81歳の今でしか出せない「音」でしょう。
プーレと指揮者、楽員たちのコンビネーションも驚くほど緊密で、最後まで緩むことがありませんでした。プーレの微妙なテンポや強弱の揺れにぴたりとつける豊平青の手腕は実に見事でした。19世紀後半のドイツで生まれた作品を、20世紀前半生まれのフランス人と、21世紀に育った日本の若者たちが一緒になって演奏する。こんな際立った異文化、異世代コラボレーションが成立し、新たな演奏芸術を生み出すのはクラシック音楽の醍醐味と言えるでしょう。そして、プーレ独特の「音」を介して、約40分間にわたる精神的対話を客席で体験できたことに深い感謝を捧げたいと思います。
鳴り止まぬ拍手に応えて、プーレはバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番よりサラバンドを披露しました。これもまたヴァイオリンという楽器を超えた音楽でした。サラバンドというのは舞曲の名称ですが、プーレの演奏では、やはり「舞曲」を超えた音楽で、受難曲的、鎮魂曲的な内容を感じさせました。聴いていて、その深遠な美しさと優しさに涙が溢れてきました。そして、このパルティータに、バッハが最初の妻、マリア・バルバラを失った悲しみが込められているとの説を思い出しました。
プーレのアンコールが終わり、再び豊平青がプーレとともに舞台に姿を現わすと、彼は目を真っ赤にして泣きはらしていました。冷静な統率者、音楽愛に溢れた情熱家、感動屋を併せ持ったこの指揮者に、今後も注目して行きたいと思います。
(タワーレコード 商品統括部 板倉重雄)
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