助川敏弥『助川敏弥: 電子音楽作品集』2枚組 2026年8月30日発売
掲載: 2026年08月25日 00:00
【幻の環境音楽・電子音楽CD完成】
巨匠・助川敏弥のアンビエントワークスを発掘!
オフィスビルを満たして都市の空間に消えていった珠玉の音楽たち
国内盤CD2枚組
■商品解説(メーカーインフォより)
本作は、助川が託した約50本のマスターDAT(デジタル・オーディオ・テープ)を音源とし、NHK電子音楽スタジオで作った本格的な電子音楽から、企業ビルの空間を満たすために書かれた環境音楽までを、没後11年の節目にまとめたものです。大半が初CD化であり、未発表音源も含まれます。
忘れられた巨匠:助川敏弥について
助川敏弥は、黛敏郎、諸井誠、湯浅譲二、武満徹らと同じく、日本で最初に「電子音楽」と本格的に向き合った世代の作曲家です。藝大在学中の1954年に日本音楽コンクール第一位・特賞を受賞し、アカデミズムの王道を歩みながら、ピアノ曲にも傑作が多いですが、やがて電子音楽、そして環境音楽へと向かいました。
世界的な「Kankyo Ongaku」再評価
2010年代後半、海外の音楽ファンが、日本の1980年代環境音楽を「Kankyo Ongaku」として発掘し、その名を冠したコンピレーション(2019年)は第62回グラミー賞(2020年)にノミネートされました。助川のバイオシック・ミュージックもYouTubeで数十万回再生され、海外の音楽ブログが高く評価してじわじわと人気を集めています。発表当時の音楽界が評価できなかった仕事を、世界のアンビエント音楽ファンが再発見した。本作は、このねじれに一石を投じる試みです。
「実用」と「創造」を同時に追求
デザインや現代美術の側から環境音楽に入った当時の環境音楽家、吉村弘、芦川聡などに対して、助川は現代音楽アカデミズムの側から来ました。助川自身の定義によれば、環境音楽とは「実用目的を優位に考え、しかもそこに新しい音楽創造の場を造り出そうとするもの」。1986年には音楽心理学者・貫行子との共同で日本初とされるアルファ波誘発音楽《星へのいざない》を制作。翌年バイオシック環境音楽研究所を設立し、鹿島建設のオフィスビル・技術研究所のための音楽制作を10年以上続けました。天井スピーカーの性能から逆算して作曲し、社員アンケートで反響を確かめる。楽曲制作に、まったく新しい物差しが加えられていたのです。
芸術とは、現実をみせるものではなく、夢を与えるもの
現代音楽の最前線を内側から見た助川ですが、その根幹には、戦中体験に由来する信念があります。非合理な精神主義への反感と、機械や科学が個人の差を埋める力への信頼です。それゆえに、必要であれば機械を積極的に使用する。そして「芸術とは、現実をみせるものではなく、夢を与えるもの」という考えです。その信念が実践されたのが1945年8月5日の原爆投下をテーマにした被爆ピアノと弦楽による《おわりのない朝》(DISC1収録)です。助川敏弥の名を世界に知らしめた傑作です。
(スリーシェルズ)

【曲目】
DISC 1 - NHK電子音楽スタジオの本格的な電子音楽作品群。
1.被爆ピアノとオーケストラのための「おわりのない朝 1945.8.6.」Op.68(1983)/The Eternal Morning
2.風のうた Op.62(1980)/Chant Du Vent Op.62
3-4. NHK「現代の音楽」アイキャッチ&テーマ音楽(1990)/Theme Music For NHK Radio Program
5.みどりなすはこべもえず Op.78(1989)/The Green Chickweed Has Not Sprouted
6.響像 Op.59(1978)/Structure
《おわりのない朝》は、被爆したピアノを核に、弦楽・電子音・具体音をテープに定着した作品。街の雑踏、原爆投下命令書、サイレン、B-29の爆音、平和祭の鐘--悲痛な現実の素材が、終結部で弦楽とピアノによる夢幻的音楽へと変貌します。作曲者の信条の、最も重い実践です。《風のうた》は作曲者初の純粋な電子音楽。旋律は、フェーダーの一本一本に音階を割り当て、上げ下げして「演奏」されました。北海道の原生林の原風景が、荒涼たる音の風景画として立ち上がります。
DISC 2 - 助川敏弥スタジオ(バイオシック音楽研究所)での仕事。癒しの音楽。
CD化もコンサート演奏もされず、毎日オフィスビルの空間を満たして、都市の空間に消えていった音楽群。作曲当時の実用的な評価基準ではなく、いま新たに聴く音楽としての美しさによって選び直されました。
1.ベーリング海峡(1986)/Bering Strait
2.八時半の音楽(1991)/Music for 8:30 A.M.
3.休憩の音楽1(1989)/Music for Break Time1
4.休憩の音楽2(1989)/Music for Break Time2
5.Evening(1995/Type2)
6.Afternoon(1995/Type3)
7.Requiem(1997/Type2)
8.Lacrimosa(1999)
9.Night Rain(1999/Take1)
《ベーリング海峡》は自宅のローランドJUNO-60を手弾きし、市販機材のみで制作された転回点の作品。松平頼暁は「従来の電子音楽とは別の場で仕事をしようとしている」と評しました。《八時半の音楽》は、無調音列の意図的な計算が心身を整え、気持ちの切り替えをはかる。《休憩の音楽》は宮沢賢治の星めぐりの歌を引用しており、ゆったりとした呼吸にあわせたビート感が特筆される心地よい音楽。《Evening》《Afternoon》は、ブライアン・イーノのアンビエント音楽への日本のアカデミズムからの返答と言えるかもしれない。シンセコーラスに憧憬と郷愁をおぼえるデジタルサウンド世代・必聴!《Night Rain》の楽譜には、晩年の助川自身がこう記している。「九月の夜 温かい雨が降る ぬれても悲しくない雨が」。遺された4テイクのうち、純粋な楽想が刻まれたTake1を採用。
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