インタビュー

Studio Apartment

掲載: 2005年07月07日 10:00

更新: 2005年07月07日 19:23


 ディスコ~ハウス・ミュージックを肴に、連夜踊り明かす知人からこんな話を聞いた。〈ティミーが“Flight”を一晩に5回くらいかけていたよ〉。ティミーとは、NYダンス・ミュージック界の第一線で活躍するヴェテランDJ=ティミー・レジスフォードのこと。“Flight”とはこちらに登場の2人組、STUDIO APARTMENTの楽曲のことだ。ブラジリアン・グルーヴと歌心溢れるアレンジが光る彼らのセカンド・アルバム『WORLD LINE』が日本国内でロングセラーを記録するなか、同盤に収録のヴォーカル曲“Flight”がNYのレーベル=キング・ストリートからリリースされてヒット。これをキッカケにその名は一気に国内外で知られる存在になった。もともとはお互いレア・グルーヴやいわゆるクラブ・ジャズと呼ばれるようなサウンドを志向していたユニットだけに、ハウスDJの太鼓判は嬉しい誤算だったようだ。そしてこのサード・アルバム『PEOPLE TO PEOPLE』、DJ活動も精力的に行う森田昌典いわく「聴きやすくなった、前よりも大人になったんですよ(笑)。(“Flight”が)キング・ストリートからリリースされた、という流れもあって今回は(NYハウス)周辺のヴォーカリストに参加してもらいました」(以下同)。

 新作には前作同様、彼らの持ち味であるパーカッシヴなリズムを機軸に、強力なヴォーカル・トラックが並んでいるが、目を引くのはそのゲスト陣の豪華さだろう。ケニー・ボビアン、ステファニー・クック、ジョイ・カードウェルなど、ハウス・シーンの第一線で活躍するヴォーカリストが名を連ねる。特にゴスペル育ちのケニー・ボビアンが歌い上げる、スティーヴィー・ワンダー“Isn't She Lovely”のハウス・ヴァージョンは壮麗だ。

「スティーヴィーの曲の中でも、“Isn't She Lovely”のカヴァーが少ないんです。前々からやりたいなとは思っていて。ケニー(のヴォーカル)はズバ抜けていましたね。メロディーのラインやフェイクのアレンジも、外国人特有の素晴らしいフレーズがどんどん出てくる」。

 そのほか、本作で〈大人になった〉部分はリズムとベースの音圧や、グルーヴ感。「今回のアルバムは、普通のコンポやラジカセでは聴こえないような低い音域のベースラインを多用しています」と語るとおり、今回は打ち込みのベース音源がほとんどを占め、逆にパーカッションには生演奏をふんだんに採り入れた。デモをもとにミュージシャンを招いて作り込むという制作プロセスだそうだが、ディレクションに関しての話では隅々からプロ気質が見え隠れする。

「何に関しても、しっかり関与してやらないと嫌なんですよね。やっぱり自分たちらしさというのはなくしたくないので。ギターでもホーンでもまずこちらが基本イメージを作るから、完全にお任せっていうのはほとんどないかな。自分たちでカッチリ作り上げたいんでしょうね」。

 海外のダンス・フロアも見据えながら、濃密かつポップな楽曲群を作り上げた彼ら。次はどこをめざすのだろうか? 前作の帯に書かれていたコピー〈日本クラブ・ジャズ第三世代〉という評について訊ねたら、こんな展望が返ってきた。

「日本には大沢(伸一)さんや田中(知之)さんのようなメジャーで活躍する人がいる一方で、福富(幸宏)さんやDJ NORIさんのようなアンダーグラウンドなシーンで活躍している人もたくさんいる。こういうのって(後発の)僕らの世代じゃないと言えないことじゃないですか。自分個人としては、その中間的な立ち位置で、今後活動していければ理想ですね」。

 今後、彼らはプロデューサー・ユニットとしてJ-Popマーケットの第一線で歌手のプロデュースなども行っていくという。これはちょっと、すごいことになるかもしれない。

PROFILE

STUDIO APARTMENT
森田昌典(DJ/サウンド・プロデュース)と阿部登(マルチ・プレイヤー)によるユニット。2000年より、コンピへの参加やリミックス・ワークを中心とした活動を開始。2002年にファースト・アルバム『PARAISO TERRESTRE』を、2004年にセカンド・アルバム『WORLD LINE』をリリース。同作が国内外のDJチャートで上位にランクインし、同年にはNYのレーベル=キング・ストリートからリカットEP“Flight”をリリースして話題となる。今年に入り、EP『Journey/Isn't She Lovely』、シングル“Love is the answer”、EP『We are lonely/Questo mondo immenso』を発表し、それらも収録されたサード・アルバム『PEOPLE TO PEOPLE』(NEW WORLD)を7月6日にリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/リョウ 原田