インタビュー

湯川潮音

掲載: 2006年02月02日 12:00

更新: 2006年02月02日 18:01

ポップで、安らかで、不可思議で――ナチュラルな魅力を開花させた新作が登場!


 穏やかさの中に赤い熱が感じられる、そんなポップ・ソングを湯川潮音は作る。彼女の歌を前にするといつも、その熱を掴みたい欲求に駆られてしまうのだが、いつもスルリとかわされてしまい、途方に暮れてしまう。だからこそまた繰り返し聴く、といった中毒性の高い音楽だ。こちらを引き寄せるそんな力がより強くなったのでは?と思わせるのが、このメジャー・デビュー・アルバム『湯川潮音』なのであった。

「念頭にあったのはいかに簡単にできるか、ポップにできるかってことでした。まずわかりやすいものと自分がやりたいものと2パターン作ってみるんですけど、極力わかりやすいものを選んだつもり。(プロデューサーの鈴木)惣一朗さんは、どっちのほうが広く伝わるかって疑問をいつも投げかけてくれましたね」。

 着実に進歩の証しを作品に定着させつつ、彼女は進んでいる。極上のアコースティック・サウンドと寄り添い合う歌声の響きは実に雄弁であるし、これまでになく太く明確な輪郭を持つ楽曲は、驚くほど鮮明な世界を描き出す。永積タカシ、岸田繁、ジェイムス・イハという3人の兄貴陣が提供したメロディーも極上だ。

「ただ、不可思議な部分は根本的に自分の中にあるものなので、そこがいろんな場面で自然と出てしまっていると思うんですけど」。

 微笑んでいたかと思えば、ハッとするような不敵さを浮かばせたりする性格が彼女の音楽にはある。わかりやすさが前面に出たぶん、受け手が時に感じるギャップや、そこから来るショックは倍増するかも。

「シンガーとソングライターとしての自分を切り離して考えるようになったんですよね。自分の声は、どういう音や言葉が鳴りやすいかを考えて曲作りできるようになって」。

 自分を鏡に映して客観的な分析ができるようになったってこと。もちろん、それは表現を限定する作業ではない。鳴りやすさを追求することでいままで用いなかったフレーズも出てくるようになったようで。例えば〈抱きしめて〉(“緑のアーチ”)というストレートな一語の登場など。これがとても雄弁で、鮮明に迫ってくるのだ。

「ずっと合唱をやってて、人と重なることで何かを発せられると知った。そして音楽を作り始めて、個で発信できることも知った。このバランスがうまくとれる歌い手になりたいんです」と力強く語る彼女。もしかすると次はイガイガでトゲトゲなアルバムが届けられるかも、なんて夢想したが、それはそれできっと仲良くできるだろう。

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ソース: 『bounce』 272号(2005/12/25)

文/桑原 シロー