インタビュー

南波志帆

 大人たちが想像/創造する〈15歳の女子〉という記号を超えたところで、眩いほどの輝きを放つ――。南波志帆のデビュー・アルバムには、そんな彼女のキャラクターやマインド、歌声が持つピュアネスを知性的に楽曲へと落とし込んだ、とびきり良質なポップ・ミュージックがパッケージされている。〈彼女の日常=リアル〉を〈音楽=ファンタジー〉へと変換する手助けをしたポップス職人たちの話から、彼女の魅力にほんの少しでも近づけたら……。

  南波志帆。93年、福岡県生まれの15歳。現在、中学三年生。特技はダンス、硬筆(特待生)、習字(9段)、水泳。明朗活発。優等生。目力が強い。クラスの男子はもちろん、女子でも憧れてしまうほど可愛い……と、こんな表層的な情報だけで、「きっと小学生の頃は、近所の人から〈モーニング娘。に入ったら?〉なんて言われたことがあるはず」――なんて〈萌え〉てしまったキミ! そんなキミには、彼女のデビュー・アルバム『はじめまして、私。』をぜひ聴いてもらいたい。弾けるようなサウンド、メロディー、15歳の日常が透けて見えてくるような詞世界、ピュアで清涼感のある歌声――これはもう、可愛いだけのアイドル・ポップなんかとはモノが違う。15歳女子のリアル・マインドをリアルな色合いで伝える〈有機質〉なポップス作品誕生!……というわけで、今作のプロデューサーである矢野博康氏に話を訊いてみた。

――彼女をプロデュースすることになったのは、そもそもどういうきっかけで?

矢野博康(以下、矢野) もともと彼女は地元の福岡で、小さい頃からイヴェントでダンスを踊ったり、舞台に出演したり、色々活動をしていたんですけど、TOKYO FMの「SCHOOL OF LOCK!」の企画した〈モデチャングランプリ〉に応募して、そこで準グランプリに選ばれたんですよね。それで、彼女に興味を持っていた事務所の方から、「南波志帆をCDデビューさせたい」という話がレーベルに来て、そこから僕にオファーがあったと。

――どんな作業から始めていったんですか?

矢野 まずは声を聴かなくちゃってことで、いろいろ歌わせたんですよね。30曲ぐらい歌ってもらったかな。もちろん全部カヴァーですけど、そのなかにキリンジとか、今回の制作に携わってもらったミュージシャンのものとか入れておいたりして。春先は、どんな音だったら彼女の声に合うかなっていうことを探ってましたね。

――結果、見事にハマッたのが、デビューCDに収められたようなサウンドという。

矢野 そう。温度感の高いオケだと、曲調に声が引っぱられちゃうというか、彼女ならではのものが出ないなって。もうちょっと清涼感のある、清々しいタイプのほうがハマるんですよね。原田知世の“天国にいちばん近い島”とかキリンジの“グッデイ・グッバイ”とか、歌ってもらったなかではそのへんの曲がわりと良かったな。でまあ、そうやって〈熱のバランス〉を彼女と一緒に探っていったんですけど、すごく頭の切れる子でね。最後に録ったのが“昨日の君のひとりごと”っていう曲なんですけど、その頃には僕もシンガーとして接してましたよ。「もうちょっと大人っぽくやろうか」とか、「子供っぽくやろうか」みたいな漠然とした注文も理解できる感じになってたし、「ここはこういう感じがいい」とか自分の意志もところどころ入れるようになってきて。レコーディングはデリケートな作業ではあったけど、僕が言ったことを彼女なりに理解できるし、ダンスをやってるせいか身体で理解しようとするところもある。で、「わかりました!」って言ったあとに歌ったテイクは大抵ズレないというか、僕としては「ああ、わかってくれたんだ」みたいな。すごく器用ですよ。ピッチもいいしね。

――15歳の女の子が歌うポップスとして、最近聴いたことのないテイストのものに仕上がりましたね。

矢野 作ってて僕もそう思いましたね。彼女自身、すごく可愛らしいんですけど、イマドキのアイドル・ポップスにはしたくないなって。いわゆる〈萌え~〉な感じとかね。そうじゃなくて、本当の意味で15歳らしいポップスを作り上げたかったんですよね。

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掲載: 2008年11月20日 18:00

更新: 2008年11月21日 13:44

文/久保田泰平