LOTUS GUITAR
誰もが認める2つの才能がお互いを刺激し、高め合った先には何がある? オリジナルのオルタナ世代がナチュラルにルーツ回帰した新作は、アンプラグドなトラッドや構築的なポスト・ロック、ハード・ロックのカヴァーまでをやってのける、愚直なまでに剥き出しのサウンドが満載だ!!
ASHとクラムボンの伊藤大助。すなわちギターとドラムのみで、お互いを刺激し、高め合う。その独創的でナチュラルな活動スタイルが、アンプラグドなトラッドから構築的なポスト・ロック、メタルのカヴァーまでやってのけるLOTUS GUITARのサウンドそのものといっても良いだろう。2005年に活動を開始した彼らが、翌年の傑作ファースト・アルバム『first trip』以来となる待望のセカンド・アルバム『second tide』をリリースした。本作は前回と同様に、ストレス・フリーな環境で制作されたという。
「他のバンドと違って、レコーディング・スタジオには完全に2人しかいないんですよ。暇を見つけてリハーサル・スタジオに1日籠りきって、録れるだけ録っちゃう感じで。あいだにエンジニアとかプロデューサーを立てるやり方もあるとは思うんだけど、いまは自分たちの手だけで最後のマスタリングまで完結させたい感じかな。つまり、自分が思い描いた音を、そのまま聴き手に伝えたいということなんです。よく、〈ライヴは良いけどCDは良くない〉なんてバンドがいるけど、それは伝える手法を知らないから。ライヴとCDで、お客さんに自分たちの音楽を伝える手法は変えなくてはいけないんだけど、それは積んできた経験がすごく重要なんです。だからこそ、発信したい音楽を熟知している自分がすべてを統括できる音楽活動は、すごく正しいことだと思う。要するに、ワガママなんです(笑)」(ASH、ヴォーカル/ギター)。
「ASHさんは、盛り込む雰囲気とかも含めて、僕に求めてくるドラムがすごく明快なんですよ。その一方で、初めて聴いたギター・リフに合わせて適当にドラムを合わせてると、いつの間にか録音していたり(笑)。ある意味、方向性はブレないですよね。最近は、自分で演奏して録音してミックスして、CD出しちゃう人って多いじゃないですか? 僕も、自分のなかにあるものを、そのまま音楽に出来てしまえば、それに越したことはないと思うんです。その方が、伝えたいことの純度が上がると思うし」(伊藤大助、ドラムス:以下、伊藤)。
本作を聴いてまず驚かされたのは、フィードバック・ノイズが甘美に唸るオルタナ然とした“雨あがりて”で幕を開けたこと。前作の手触りとは、あきらかに違う。
「当初、思い描いていた青写真的なものは、もっとトラッド的で、アコースティックな楽曲が集まったアルバムだったでんすよ。だけど、今年の頭に“汚れた雪”ができた時に〈これだ!〉と思う瞬間があって。そこから発展していって、“雨あがりて”“sun doesn't shine”が生まれたんです。そこで、〈いま俺はこういう曲がやりたいんだな〉と、確信が持てたんですよね。結果的に、ファーストよりも満足のいった作品ができたと自負していますよ」(ASH)。
言うなればルーツ回帰。それはオリジナルのオルタナ世代が背負い込んだ業とも言うべき、愚直なまでに剥き出しなサウンド志向だ。スティーヴ・アルビニの名を引き合いに出さずとも、その〈剥き出しの音〉を嗜好する先にポスト・ロックがあり、音響系があり、ミニマルな音を重ねたポスト・ハードコア、そしてマスロック的なアプローチが生まれている。そしてLOTUS GUITARも、その系譜に連なる存在として、業を背負い込んだバンドなのかもしれない。
「結果的にルーツ回帰したんですよ。でも、正直恥ずかしかったです。だって、自分たちの原点を曝け出すような曲なんだから。でも1曲目に“雨あがりて”を持ってきたということは、〈これが嫌なら聴かなくていいよ〉くらいの気持ちもあるんです」(ASH)。
「毎回新しいチャレンジなんですよ。僕が鳴らすドラムの一音や、リズムのひとつをとっても、やっぱり意味のあるものでなければならないと思っていて。そうは言っても、所詮は打楽器だし、その演奏ひとつで物語が生まれるほどのものではないのかもしれないけど、主観的、客観的、そして置換的に意味が見いだせるものを、必ず自分の演奏のなかで見せていきたいという思いはありますね。その時に思っていることと、自分の表現に関わる意味性は、このCDに演奏としても収められているわけです」(伊藤)。
前作にも“Back In Black”という神懸かったカヴァーを披露していた彼らだが、本作ではクラムボンの“Folklore”、そしてUFOの“Rock Bottom”をカヴァーしている。遊び心に比重が置かれたその柔軟な視点、姿勢こそ、バンドの特異性を物語るものである。
「“Folklore”は、嫉妬するくらい良い曲だと思っていたんですよ。それで、伊藤くんに〈カヴァーしていい?〉って訊いたら〈いいですよ〉って言うんで、カヴァーしちゃいました(笑)。“Rock Bottom”はね、シャレです(一同笑)」(ASH)。
「こうやってのんびり自由な感じで続けていく方が、いまの時代難しいんじゃないかなぁって(笑)。ノンビリやっているように見える人ほど、その状況でやっていくのを維持するために、見えないところで頑張っているかもしれない。それは、僕たちもそうかもしれません。ちょっとだけですけどね(笑)」(伊藤)。
▼LOTUS GUITARの作品を紹介
▼ASH、伊藤大助の関連作品を紹介
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