ajapai(3)
どれだけ自我をなくした状態で音にハマれるか
――そうしたキャチーさがある一方で、ブレイクでノイジーなベースが〈ブー!〉って唸ってる“two swarded”やストリングスのサンプルを小気味よくエディットしている“jigglin”や素っ頓狂なシンセでキメまくった“godfather”など、交通事故みたいに強烈なブレイクが満載のかなりオープンでズル剥けた作品にもなっていますよね。
ajapai そうそう。それが楽しい。どれだけぶっちゃけ感が出せるかが勝負だったし、楽しかったですね。逃げも隠れもしないでね。
――チンコ出してなんぼみたいな?
ajapai ハハハ、「え? ええええ!?」みたいなね。
――(笑)。あとアルバムなので、ワイルドなパーティー・トラック満載のなかでもある程度統一感のあるムードに支配されているんですが、ここら辺はどんなイメージを持っていたんでしょうか?
ajapai ストーリー性みたいなものというよりは、宇宙感を薄くイメージしながら作ってましたね。これは本名名義のアルバムでもそうだったんですけど、夢があるじゃないですか、シンセサイザーとかって。YMOみたいなピカピカした感じがして、コックピットがあってっていう。
――コックピットまでイメージしてましたか(笑)。
ajapai そうそう。もうずーっとあるんでしょうね、そういうイメージが。小学生の頃からマジンガーZや実写のロボットが強烈に刷り込まれているから。それが、ガンダムかっていうとちょっと違うんですけど。
――あ、ガンダムの宇宙感は違うんですね(笑)。
ajapai でも、ハーヴェイのミックスCDでシャアザク使ってて(→を参照)、思わず「大丈夫か?」って共感する部分はあるんだけど(笑)。
――ネタがネタだけに、ネタ師としては色々と心配しちゃいますよね(笑)。
ajapai そうそう(笑)。で、話は戻るんですけど、実写版のロボットものとかって、いま見ると「ええええ!」って感じがあるじゃないですか。「バレバレやん」みたいな。充実してない機材や技術で無理してでもロボットを表現することによって生まれる、あの独特な感じ。それがいまのぶっちゃけ度の高いダンス・ミュージックに繋がっていると思うんですよ。
――確かに「フェイク感上等!」みたいなノリはあるかもしれないですね。いかがわしさだったり、おもちゃ感覚だったり。
ajapai それが格好いいと思って楽しめればいいっていうね。まあ、ガンダムがダメっていうんじゃなくて、僕は最初のガンダムが好きだったんですけど、そこ以降はなんか違う方向にいっちゃって……あまりに気持ち悪くて見れなかったんですよ。
――ハハハ。敢えて言うならajapaiさんはファースト派であると(笑)。
ajapai いやいや。で、それはさておき、夢とか、見たこともないロボットだったりとか見たことのない宇宙だったりとか、行ったことのない星が空にはいっぱいあるんだって思うとワクワクするじゃないですか。そういう感じを僕は音楽のなかに入れたいと思うんですよね。シンセをいじってると宇宙を感じる。昔の映画で惑星とかが出ると〈ホワンホワンホワン〉〈ピューン〉って音が鳴ってたじゃないですか。あれはほとんどムーグで作っているんですけど、高校のときに初めてシンセを買って、実際ツマミをいじったらその音が出て「すげー!」ってなった。あの頃の感覚や、自分のなかでの神話性のあるもの。それが宇宙なんですよ。ダンス・ミュージックも宇宙だし、踊るってことがそもそも宇宙だと思う。どれだけ自我をなくした状態で音にハマれるか。ものすごくいいDJで踊りまくって、自我を忘れる感覚ってあるじゃないですか。若い頃、ラリー・レヴァンのDJを実際に聴いて、終わったのに気付かないほど陶酔してしまった感じ。ノンアルコールでピュアな状態でもそういう風になれる音を作りたいんですよね。人間として生きている以上、色んなところで自我が邪魔して、それがエゴになったりする。今回はそういう方向にはしたくなかったですね。
――余計なことを考えないで真っ白になって踊れるパーティ・アルバムとして、本作はその場所に辿り着いてると思います。それでは最後の質問なんですが、セルフ・タイトルを冠した本作はajapaiのキャリアのなかでどのような位置づけになると思いますか?
ajapai 僕はいま40歳なんですけど、何歳になってもブリブリガチャガチャとドラムとかベースをいじっていたいんですよね。腰が痛くてクラブに行けないこともあるけど(笑)、若い人相手に「これどう?」「ヤバいっすね」ってのを見せたりして、どれだけ意地(笑)になってやっていられるか。多分このアルバムってその出発点になると思うんですよ。
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