インタビュー

ajapai 『ajapai』 ユニバーサルJ



  昨年10月に、本格的な活動再開を世に告げるミックスCD『up』を発表。そのエレクトロ~フィジェット・ハウス中心の選曲で旧来のイメージを覆し、ダンス・ミュージック愛好家の衆目を大いに集めた森俊彦=ajapai。あれから約半年を経て届けられた4作目『ajapai』は、『up』のフィジェット路線をストレートに推し進め、オリジナル・アルバムとして結実させた勢いたっぷりの一枚だ。ヴォーカリストを起用したりといった、シュガー・コーティング的なアプローチは一切なし。最前線のダンス・トラックをダンス・トラックのまま、活き活きと封じ込めることに成功している。

 ゲットー産チップ・チューンとでも形容できそうな“pon pon”、インダストリアルな上モノが凄まじい“two sworded”、プログレばりの展開を見せるダブ・ステップ“watch out”、フレンチ・タッチの昂揚感を注入した“jigglin'”、レイヴィーなシンセが炸裂する“speeder”……などなど、あの手この手のアッパーなサウンドが並んでいるが、全編を図太く貫いているのは、フィジェット・マナーの極悪なベース。エグいこと極まりない低音がブイブイビキビキと絶えずのたうち回り、リスナーをクレイジーなダンス大会へと誘う。

 ajapai曰く「ベースがヴォーカル」とのことだが、それにしても「ここまでやるか?」ってくらいの低音至上主義っぷり。トゥー・マッチ過ぎて、もはや笑っちゃうレヴェルに達しているが、それは本人も意図するところのようだ。過剰なカットアップを繰り返した挙句に爆発音でドカーンと終わる“a suite”などを聴いていると、ダンス・ミュージックが持つ下世話でバカバカしい部分に楽しさを見出しているajapaiの姿が浮かび上がるし、本作の一番の魅力も、そんな下世話でバカバカしい魅力を獲得してみせた点にあるのでは。ともすると、シリアスな態度ばかりが評価されがちな国産ダンス・ミュージック・シーンとは一線を画する、なんとも粋なパーティー直送盤だ。

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掲載: 2009年04月02日 16:00

更新: 2009年04月02日 23:54

文/澤田大輔

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