Hiza:ki
多彩なアプローチが施された前作から大きな変貌を遂げたファースト・フル・アルバムを携えて、柏発の4人組が2年3か月ぶりに帰還した。意匠を凝らしたサウンドをシンプルに轟かせる独自のメロディック・ハードコアに貫かれた本作について、しん(ヴォーカル/ギター)、kaji(ベース/コーラス)、6(ドラムス/コーラス)の3人に話を訊いた。
もっとメロディーを前に出して、シンプルにしていこうと
――これまでの2作品からの変わりようにビックリしました! 前作から数えると2年3か月ぶりに完成したファースト・フル・アルバムですが、ご本人たちとしては満を持してという感じですか?
kaji「そうですね(笑)。約2年半かけて自分たちが納得いくまでじっくり作り込んで、やっと出せるっていう感じです」
――デビュー作『7+Reverse:senses』とその直後に出た『achromadisc』という2枚のミニ・アルバムは、メロディック・パンクやヘヴィー・メタルにエモやポスト・ロックのような要素も溶け込んだ多面的な作品だったと思うんです。だけど、取材させていただいた時に、kajiさんとしんさんが一貫して〈自分たちはメロコアだ〉って言い切っていたのがすごく印象的だったんですよね。それが今回の作品を聴いて納得がいったというか。よりストレートに、シンプルに自分たちの嗜好を反映させる自信が持てるようになったのかな?って。
Kaji「まあ、もともとメロコアがすごく好きで。で、いままでは元にあったメロコアの曲にやりたいことをどんどん足していった感じなんですけど、『achromadisc』を出した頃から、詰め込みすぎると逆にメロディーが映えなくなっちゃうな、と思うようになって。それで今回は、もうちょっとメロディーを出して、シンプルにしていこうっていう感じで作っていったんですよね」
――メンバーが持っているスキルや嗜好はできるだけ反映させようというバンドが多いなか、敢えてシンプルな方向に向かったっていうのがおもしろいなと思って。例えば、これまでは空間的なギターで音響的なアプローチをしていたりとか、ダブっぽい音を鳴らしていたりとか、いろんなことができる人たちなのに。
しん「そういう部分は今回のアルバムにもあるんですけど、減ってはいますね。引き算のやり方に気が付いたっていうか、その結果、メロディーが立つ曲になっていったっていう感じなんですかね」
――シンプルに、という以外にフル・アルバムを作るにあたってのテーマはありました?
しん「漠然と〈フル・アルバム出してぇ!〉って曲を作り貯めていって。1作目を出した時からずっとフル・アルバムを出すことの厳しさみたいなことを先輩とかから言われてたんですけど、ようやくアルバムと言われるだけの曲数が揃って、〈アルバム作れる、やったー!!〉って感じです(笑)」
――〈フル・アルバムを作ることの難しさ〉って、単純に曲数のこと以外にもあります?
しん「これは直接関係あるかわからないですけど、ライヴで20分、25分、30分とかの時間をもらった時に、30分だったらその30分間、丸ごと楽しいものにするって大変だと思うんですね。前は30分間のなかの真ん中の5分ぐらいは何だかわかんない時間になってしまったりとか、そういうこともあったと思うんですけど、いまは30分でもクォリティーを保てるようになった。だから、いまは〈曲数いっぱいでもいいものを詰めれるよ〉って。メロコアのなかでヴァラエティーに富んだ曲が出来たっていうか、飽きずに聴けるものになったと思います」
――そうですね。確かにどこからどう聴いてもメロコアなんですけど、曲ごとにちゃんと個性がある。特にメロディーは以前よりも強くなりましたよね。
kaji「そういっていただけると嬉しいです(笑)」
――メロディーを作る時に苦労した点は?
kaji「メロディーは、けっこうすぐできちゃう感じです。スタジオでみんなでアレンジを詰める時のほうが苦労しますね」
6「サビにいくための演奏の持っていき方が違うのかなって思うんですけど」
――展開が?
6「そうですね。サビ前のアレンジで割と止まったような気がしますね」
kaji「サビ前までのアレンジは、いろいろやってみて、ベストなものを決めていってます。シンプルな作品なんですけど、そこは苦労しましたね」
――ギターも細かいカッティングやフレーズが組み込まれていたりしますもんね。
しん「そういうところを聴いてもらえると嬉しいですね(笑)。たぶん、細かく演ってるうちに、僕ももうひとりのギターも楽器好きになったっすね」
kaji「フレーズで言ったら、けっこう前作からの名残はあるよね。今日は来てないギターのモリタとかは、元々メタルとかが好きで、そういう部分と音響っぽい感じが前回の音源では混ざってたんですけど、今回もその延長というか。曲に合ったベストなフレーズを選んでいく、っていうところでは同じですし」
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