Hiza:ki 『Hiza:ki』 SOPHORI FIELD COMPANY/colla
デビュー作『7+Reverse senses』、2作目『achromadisc』という2枚のミニ・アルバムを3か月のスパンで立て続けにリリースしたのち、ライヴ活動はひたすら重ねていたものの、〈作品発表〉という意味では沈黙を守っていたHiza:ki。そんな柏発の4人組が、2年3か月ぶりに自身の名を冠したファースト・フル・アルバム『Hiza:ki』を完成させた。これがまた……過去作で提示したサウンドとのあまりの耳ざわりの違いに驚愕せずにはいられない仕上がりだ。文頭の2作品はメロディック・パンクを中心にメタルやエモ、さらにダブやポスト・ロックなども採り込んだ作風で、前者が呼び起こすアグレッシヴなカタルシスと後者から広がる音響的なアプローチを絶妙のバランスで溶け合わせてみせた意欲作だった。言わば、彼らは非常に器用な連中のはずなのだが、本作では後者のスタイルは影を潜め、あきらかにメロコア~メロディック・パンクに寄っている。
思い起こせば、初作のインタヴューに応じたkajiとしんが、多彩な要素を孕んだみずからの音楽性を〈メロコア以外の何物でもない〉と語っていたことが非常に印象深かった。当時から〈いかに歌を引き立たせるか〉というただ一点に集中していたからこその発言だろうが、メロディーの強度が格段に増した本作を聴いたいまであれば、大いに納得できる。現在の彼らが鳴らしているサウンドは、まさしくメロコア以外の何物でもない。だが、ツイン・ギターによる繊細なアンサンブルや大胆な引き算を施すことで緩急をつけた曲展開、決してパワーで押し切ることのない流麗なアレンジからは、彼らならではの職人技もしっかりと窺える。パッと見た印象では簡素で力強い骨組みだが、クローズアップしてみるとそこに細かい文様が刻み込まれているような――そんな丁寧な作りが、独自性を見出しづらいメロディック・シーンのなかで、彼らを輝かせている個性ではないかと思う。
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