Hiza:ki(3)
あるきっかけに対して、物凄い量の言葉を使ってオチをつける
――その〈ひと言シリーズ〉からこんな歌詞になりました、っていうのはあります? もしくは、おもしろエピソードとか。
しん「いや、エピソード自体は実におもしろくないです(笑)。チャリの鍵がない、とか」
―― ……。
しん「まあ、そのチャリの鍵の話はこのアルバムには入ってないんですけど、ほとんどそうなんですよね。“Wizard”は、紙をクシャクシャしてポイって捨てるスローモーションのCMを見て書いたりとか(歌詞の一部に〈くしゃくしゃに丸めてゴミ箱へ右手で投げる〉という一文がある)。元々、そういう一瞬のことを詳しく説明するのが好きで。2分間を原稿用紙10枚分で書くとか。ちっちゃい時からそういうものの書き方をしてて」
――歌詞は、あるきっかけから相当膨らんでるってことですよね。でも、感動的な歌詞の発端が〈チャリの鍵がない〉とかだとちょっと切ないような気が(笑)。
しん「あとは、自販機から見たことない小銭がおつりで出てきた、とかね(笑)。もちろん普通に本とか読んで、そこからっていうのもあるんですけど、基本的にはそういう感じというか。けっこう〈何で?〉っていうようなとこでピンとくるというか」
――でも、物語を膨らませる時にはテーマがあったりしないんですか?
しん「漠然と浮かんでいるのは、こんなようなところにいるこんな人が、みたいな、説明できないようなフワフワッとした映像がほとんどですね。さっきの“Wizard”とかも、バチッと浮かぶのはCMの映像だけなんです。雰囲気重視というか、あいまいな感じというか」
――完全にフィクションなんだ。
しん「そうですね。あるきっかけに対して、物凄い量の言葉を使ってオチをつける、みたいな。全体としてはよくわかんないけど、要所要所で〈わかる~〉って共感できるみたいな感じ。どうとでも取れるから大丈夫、みたいなイメージなんですよね(笑)」
――曲を聴いて歌詞を書くっておっしゃってましたが、では曲を作ってる段階で〈大体こういうイメージで〉っていうのはあるんですか?
kaji「それぞれでネタを持ち込むんですけど、今回は持ち込まれた段階であった世界観を崩さない感じで作りましたね……ああー、でもモリタが作った9曲目の“bump”は、完全に揉めました(笑)。本人が作った世界観と他の3人との方向性の違っていて。結果的には、本人のやりたい方向と違う方向でまとまりましたけど」
――具体的にどう違ったんですか?
kaji「作った本人は、最初はポップなハード・ロックみたいにしたい、って言ってて」
しん「メタルみたいなギターが入ってて、本人は〈メロコアだからさ〉って言ってました(笑)」
6「速いっていうか激しいっていうか、そういう感じだったんですけど、歌だけ残った感じですね。メロディーだけ。あとの名残はないです(笑)」
――確かに名残はないですね……エモーショナルなスロウですもんね(笑)。じゃあ、最終的にはモリタさんが折れたと。
6「この3人の方向性で演ったのを聴いて、〈こっちのほうがいいわ~〉って言ってました(笑)」
――それは良かった(笑)。
6「大人気ないんです、みんな(笑)」
――(笑)まあ、そんなこんなで、ファースト・フル・アルバムはメロコア・ファンに俄然アピールする作品に仕上がりましたが、何だかこれまでのお話を聴いてると、今後の作品はまたどこに転ぶかわからない感じですね。
しん「そうですね。どうなるのか、ちょっとわかんないですね。今回のアルバムをベースに、こうしよう、ああしようっていうのはあんまり考えずに、その時に好きなものを」
――次の取材の時には、〈あまりの変わりようにビックリしました〉ってまた言ってそう。
kaji「そうかもしれないですね……ホントにどうなってるか、全然わかんないです(笑)」