Indus & Rocks(4)
セオリー沿ったものはできないけど、かけ離れたものもやりたくない
――『Hidaripokenicca』というタイトルは、どういう意味?
黒澤「これはですね、この曲を作った当時によくニッカ・ウイスキーを呑んでたんですよ。ライヴハウスに行く時も左のポケットにウイスキーを入れてて、チビチビ呑んでたんですね。そうしたらみんな俺の真似をして、左のポケットにウイスキーを入れ出したんです(笑)。その当時に演奏してたのがこの“Hidaripokenicca”っていう曲なんですよ。その頃の馬鹿な記憶を刻み込む意味でも、今回はこのタイトルにしようと」
――じゃあ、いままでのIndus & Rocksをまとめたという感覚が強い?
黒澤「そうですね。今回新しいタイトルをつけなかったのも、あくまでもこれまでの僕らをリニューアルして打ち出したかったからなんですよ」
――4曲目の“FOGGYの壁”は、東京・久米川のクラブ/バー、FOGGYをもじったタイトルが付けられてますね。
黒澤「そうですね。FOGGYにはよく遊びに行ってるし、ライヴをやったこともあるので、実際にFOGGYの空間をイメージしながら1曲作ってみようと思ったんですよ」
――2曲目の“心養い歌踊る”は次郎くんの淡い歌声が映えるレゲエ曲で。
黒澤「あくまでも〈レゲエみたいな感じ〉ってところだとは思いますけど(笑)。自分たちはあくまでも音を採り入れてるだけなので」
――でも、ビートは本格的にレゲエじゃないですか。ドラム・パターンはステッパーだし、結構レゲエを聴き込んでるとばかり思ってたんですけど。
岩野「いやぁ、全然ですね(笑)」
黒澤「とはいえ、好き勝手にやっていいとは言えども、レゲエをやるうえでどこがポイントなのか、チェックするようにはしてます。ワンドロップやステッパーみたいにビートの種類があることだとか。かしこまる感じで、〈採り入れさせていただきます!〉と(笑)」
――それでいて、自由ですよね。レゲエ・バンドがやるレゲエとも違う。
黒澤「そうですね。基本的にはセオリーと公式嫌いのところはあるので。自分たちは完全にセオリーに沿ったものはできないんですよ。セオリーをどう崩すか、いつもチャレンジしていきたいんですよね。でも、まったくかけ離れたものもやりたくない」
――今回はその“心養い歌踊る”と“ぼんやりぞら”の2曲が歌モノですけど、次郎くんの歌詞がおもしろいと思って。想像力を掻き立てるようなところがありますよね。
黒澤「あんまり具体的な表現は自分に合わない気がしてて。もう少し大きめに、曖昧に言っておきたいんでしょうね。色で言えば、〈ワインレッド〉と特定しちゃうんじゃなくて、〈赤全般〉とか。あんまり特定しちゃうと自分でも飽きちゃうし、あとは聴いてくれる人に委ねたいというか」
――聴き手が想像力を働かせる余白を残しておきたい?
黒澤「そうそう。常に想像力を掻き立てるものでありたいなとは思ってて。音に関しても、最初の頃は〈ここはこういうイメージの音だぜ〉なんて狙ってたんですけど、案外聴く人によって違う感じで捉えられるんですよね。でも、それはそれでいいと思うし、みんなの感性を刺激するようなものでありたいですね。リラックスして楽しめるものというか」
――『Hidaripokenicca』というタイトルだって、説明を聞かなければ、どこかの古代文明の言葉だと思っちゃうかもしれないし(笑)。
黒澤「そうそう、そのほうがおもしろいと思うんですよ」
――ライヴもすごい本数をやってますよね。
黒澤「ライヴは好きなんで、いっぱいやりたいんですよ。去年は3月ぐらいから〈ライヴをやるぞ!〉って決めて、それから100本ぐらいやりましたし。風邪さえひかなければ大丈夫です(笑)」
――では、最後に言いたいことがあれば。
太田「そうですね……力を抜いて聴いてもらえれば……」
黒澤「いや、〈最後まで読んでくれてありがとう〉じゃない?」
太田「そういうの、必要(笑)?」
黒澤「〈ライヴに来てください〉か」
太田「そうか。ライヴに来てください。力を抜いて……(笑)」