DATASPEAKER
2008年に活動休止を発表したsmorgasのリーダー、アイニのソロ・プロジェクト=DATASPEAKERより約7年ぶりとなるニュー・アルバムが到着! ロックとクラブ・ミュージックの旨味を知る男がいま、このタイミングで提示するサウンドとは果たして――?
芯の通ったものにしようと思った
2008年に活動休止を発表したsmorgasのリーダー、アイニによるソロ・プロジェクト、DATASPEAKER。7年ぶりとなるアルバム『WILDCARD & TRANSIENT』は、ロックとクラブ・ミュージックの〈旨味〉を凝縮したような快作だ。Kj(Dragon Ash)やTAKUMA(10-FEET)ら豪華ゲストをフィーチャリングに迎えた全7曲。ハードなエレクトロやレイヴ・サウンドもあれば、メロディアスなハウス・ナンバーも、R&Bやヒップホップの要素もある。しかしそのすべてに共通するのは、独特の切れ味を持ったブレイクビーツの爽快感だ。久々に表舞台に戻ってきたアイニに、じっくり語ってもらった。
――前作『I Need Two Side Heat』から約7年ぶりの新作になるわけですけれども。まず、どういうところから制作が始まったんでしょうか?
「まず、DATASPEAKERを始めてから今年が10周年でもあったんです。それもあって、去年からずっとやりたいとは思っていて。それで作りはじめた感じですね」
――アルバムを聴いて、非常に筋がとおったアルバムだと思ったんです。前作はいい意味でも〈遊び〉のある作品だったと思うんですけれど、今回のアルバムはかなり本気で、メジャー感のあるものになっている。
「時代的にも、前に出したアルバムのような〈遊び〉の感じはちょっと違うのかなと思ってましたね。そういう意味で、芯の通ったものにしようとは思ってました」
――今年が10周年ということは、DATASPEAKERはsmorgasと同時期に始まったプロジェクトなんですよね。始まった時のヴィジョンはどういうものだったんでしょうか?
「その時にはもうsmorgasをメインとしてやっていたので、自分がずっとやっていた打ち込みの部分を出したかったという感じで始めましたね」
――打ち込みはいつ頃からやっていたんですか?
「93~94年頃ですね。その当時からDJの人たちとの付き合いはあって。UKソウルのようなクラブ・ミュージックをやっていたりしたんです」
――クラブ・カルチャー出身だったんですね。
「そうですね。でも入り口はロックだったし、ギター少年だったんですよ。その後にクラブの尖った感じに惹かれてクラブ・ミュージックもやりはじめた。ただ、クラブにいると自分のテイストはバンドっぽいしロックっぽい。逆にバンド側だとクラブっぽい。〈俺の居場所ねえな〉みたいな感じはずっとあるんですよね(笑)」
――なるほど。その頃から15年、ロックとダンスがいろんな形で融合してきたわけで。そこからいまに至るまでの歴史がアイニさんの血となり肉となっている感じは、このアルバムにもありますよね。
「ああ、ありがとうございます。今回やってみると、その当時に吸収したものもやっぱりありますね。〈俺、古いな〉とは思いましたけど(笑)。最近の若い子たちのビートもそれなりに吸収して骨となってればいいかなとは思いますけどね」
――ちなみに、約7年のブランクの間DATASPEAKERとしてはどういう活動をしていたんでしょうか?
「ほとんど忘れてましたね(笑)。前に出した『I Need Two Side Heat』にあったような〈遊び〉の要素って、もっと受け入れられると思ってたんですよ。〈バカだねえ〉って言われながらおもしろがられるかなと思ったら、意外とそうでもなかった。時代と合わないなと思って、そこで一回思考が止まったんですよね。〈いまの時代ってどうなってるんだろう?〉って、smorgasのなかでもずっと模索していて。気がついたらいまになっていたという感じです」
――smorgasも2007年からは徐々に止まっていって、2008年の初頭に活動休止ということになっていますよね。その頃を振り返ると、どういう状況だったんでしょうか?
「やっぱり、ずっと悩んでいた時間ですね。音楽的には、自分のなかの正解をずっと探していた感じです。いまでもその延長線上にはいると思うんですけれど」
――そうすると、その〈自分のなかの正解〉と〈時代が求めているもの〉という連立方程式の解を見つけなきゃいけないわけですよね。そこで見い出したものはどんなものでした?
「いやあ、まだちゃんと答えが出ているわけではないんです。でもとりあえず、考えててもダメだと思って。今回いろんな人とやることで、そのヒントをいっぱいもらった感じですね。そいつのノートを授業中に見せてもらったみたいな(笑)。自分としてはまだまだあるんじゃないか?って求めちゃうんですけれど、それでも現時点ではこのアルバムにあるような感じなんじゃないかと思います」
- 次の記事: DATASPEAKER(2)