DATASPEAKER 『WILDCARD & TRANSIENT』 フォーライフ
〈ロックで踊る〉ということが当たり前になった2009年の空気にぴったりとアジャストしたアルバムである。smorgasの活動停止から約1年半、ソロとしての前作からは約7年――そのブランクは一切感じられない。独自のミクスチャー・ロックを提示しながら90年代を駆け抜けてきたバンドの頭脳が、もともと持っていたそのセンスをダンス・ミュージックに注入したような全7曲には、歪んだギターはなくともライヴハウスの狂騒とクラブの昂揚感を同時に伝えるような熱が漲っている。
そもそもはブレイクビーツという表現方法のおもしろさを追求する位置付けで始まったDATASPEAKER。それだけに前作『I Need Two Side Heat』(2002年)では永積タカシや原田郁子をゲストに、クイーン“Bicycle Race”をドラムンベースでカヴァーしたりするような素っ頓狂なテイストもあった。けれど、今作ではそういうものは一切なし。ビートや発想のおもしろさよりも、曲としてのポップ感に力が注がれている。
豪華なフィーチャリング陣も、一曲一曲に〈こんな人にこんな感じで歌わせるんだ!?〉という驚きを感じさせる。10-FEETのTAKUMAにはストリングスをふんだんに使ったモダン・ソウル、ドラゴンアッシュのKjにはエモーショナルな4つ打ちのハウス。RIZEのJESSEと元mach25のLOONIEにはド派手なエレクトロ。B-DASHのGONGONにはメロウでソフトなR&B。単にロックとダンス・ミュージックを融合させるだけでなく、そこにキラリと光るアイデアと否応なしに人を踊らせるパワーを迸らせたような一枚だ。
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