NICO Touches the Walls(2)
空から始まって大地に降り立つイメージ
――訊きたいことがたくさんあるんですけど、まずは歌詞のテーマとして、今回は〈夢〉というキーワードを軸に、〈命〉〈生と死〉というものを深く掘り下げていると思ったんですね。こういうテーマは、最初から考えていたんですか。
光村「最初は無意識でしたね。もともと歌詞があった曲をみんなでアレンジしたのと、歌詞を後で書いた曲と半々ぐらいで、行ったり来たりしながら作っていたので。そのなかでだんだん、日常生活の一部を切り取るというよりは、〈命〉や〈生と死〉や〈夢〉や、そういうものを大きな視点で書こうという考えが、自然に出てきましたね。〈同じテーマで書き続けてるな〉ということには、書き終わってから気付きました。そういう意味では、いまの自分たちの気分だとか、ずっと思い続けてきたことが、より自分のなかにきちんと根付いたんだろうなと思うんですけどね」
――そういうことは、メンバーとも話すんですか。
光村「歌詞については、一切何も言いません。でも今回は、みんなで同じ気分になってやれていたし、歌詞とそれぞれのアレンジとの相乗効果を求めていたというのはあったと思います」
坂倉「歌詞の世界観は、曲を作っていくうえで頭の片隅にはずっとありました。曲全体でその世界を表現していきたいというのは今年のテーマでもあったし、すごく大事にしてましたね」
古村「特に今回のアルバムは、言葉とメロディーを大事にしていて、必然的にそれを前提にしたアレンジになっていって。全部が関係しているということをすごく実感しました。歌詞もメロディーもみんなの楽器も、今回はすごくいっぱい聴いたなという感じです」
対馬「基本的に歌詞は、みっちゃん(光村)が思うがままに書けばいいと思っているので。でも今回はみんなが見てるものがいっしょだったから、〈僕たちの歌です〉という気持ちが僕のなかではすごく強いんですよ。言い換えると(曲に対する)〈愛情〉だと思うんですけど、〈これ、いいだろ?〉って言いたい気持ちになれる歌詞ですね」
――アルバム・タイトルが『オーロラ』で、1曲目も“Aurora”。この曲がアルバムの鍵になっているようですね。
光村「“ビッグフット”“ホログラム”“かけら-総べての想いたちへ-”と、アルバムの前にシングルになった曲を作っている段階で、今年自分がどういう気持ちで音楽を作っているのかが、だんだんわかってきたんですよ。“ホログラム”の録音が終わったあたりで、今回のアルバム・タイトルは『オーロラ』にしようと決めたんですけど、まず“Aurora”という曲があって、歌詞は元々出来ていて。その世界観が、きっと今年のモードのいちばん芯になっている部分なんだな、と思ってこの曲をみんなに聴かせた時に、アルバムの世界観が定まった感じがあったんですね。歌詞もメロディーも、まさしく今年の僕らを言い表してる曲だと思います。さっき坂倉が〈頭の片隅にはずっとあった〉と言ったのも、“Aurora”という曲が持つ〈夢を見よう〉というキーワードだったり、この曲のサウンドが持つ輝いた世界観だったり、そういうものだったと思うので。僕にもそれはあったし、その世界観に呼ばれて“芽”という曲が出来て、そうやって全部が繋がっていったんですよね」
――結果的に、アルバム全体に時間の流れと、意識の流れがあって。
光村「“Aurora”が出来た時に思ったのは、空から始まって大地に降り立つイメージを、アルバムのなかで作りたいということだったんですよね。それが“Aurora”から始まって“トマト”で終わるということでもあるんですけど、実はアルバムの大筋の流れというのは、アタマの3曲で一度集約されているんですよ。“Aurora”“ホログラム”“芽”の3曲で」
――ああ、なるほど。確かにそうですね。
光村「〈空から大地へ〉というテーマのなかで、今回はどの曲でもどの歌詞でも、自分たちの人間臭い部分を出したかったんですよ。アルバムの最後に“トマト”を選んだのもそういうことで、この曲が切り取っているのは空であり大地であり……という〈景色〉なんですけど、その景色のなかには必ず人間がいるんです。〈人間がその景色を見ている〉ということをどの曲でも大事にしていて、すごく意識しました。実際にアルバムのなかで並べてみるまでは、〈本当に描きたいものを描けるのか?〉って心配だったんですけど。でも1曲1曲きちんと描き切ったからこそ、こういうふうにうまく並べることができたんだなと思います」
――〈限りある命だからこそ根を張っていたい、思い通りの日々を咲かせたい〉という、“芽”で歌われるメッセージは素晴らしいと思います。
光村「やっぱり、常にあるんですね。音楽をやりたいということの裏に〈自分がどういう人生を送りたいのか?〉ということが。メジャー・デビューして少しずつ夢が叶っているところもあるし、だからこそ余計に考えるというか、〈一体どこで満足したらいいのか?〉っていう気持ちが常にあるからこそ、歌詞になった時の重さみたいなものが、どの曲にもあるんだと思います。僕はフィクションとして歌詞を書くのが自分のスタイルだと思ってるんですけど、でも今回選んだ歌詞のシーンは、いまの気持ちにすごく近いものを必然的に選んでいて。いま歌うからこそ説得力が生まれるものを作りたかったんですよね。“芽”の歌詞は、ひとつも無駄な言葉を使いたくなかったし、サビで言ってるように〈今を照らしてほしい〉ということですね。この“芽”の歌詞は、いちばん最後に書いたんですよ。今回のアルバムの総括みたいなものが、この曲の歌詞にはあると思います。いまだからこそ貪欲になって、自分が描きたいもの、自分がなりたいものを、ガムシャラに追求していいんじゃないかという思いが、このアルバムではすごく強いです」
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