インタビュー

NICO Touches the Walls 『オーロラ』 キューン



  〈歌モノ〉としての機能を高めつつ、バンド・サウンドの新たな可能性を追求することも止めない。『オーロラ』と名付けられた本作で彼らは、みずから設定したハードルを見事に飛び越え、バンドとしてのポテンシャルを大きく引き出すことに成功した。

 ファースト・アルバム『Who are you?』は彼ら自身も認めているように、NICO Touches The Wallsというバンドの持つ、カラフルな音楽性を表現した作品だった。それはバンドの多面性をきちんと示す一方、どこか散漫な印象を与えていたことも事実。それを踏まえて制作に入った本作では、光村龍哉の歌――研ぎ澄まされた緊張感と叙情的な表情を兼ね備えた――を軸にすることで、しっかりと芯のあるアルバムに仕上がっているのだ。そのことを端的に提示しているのが“芽”という楽曲。アリーナ・クラスのスケールを感じさせるメロディーを骨太のアンサンブルが支えるこの曲は、2009年における彼らの進化ぶりを証明するに十分な名曲だと思う。

 また、陰のあるラテン・フレイヴァーが印象的な“Lonesome Ghost”、バンドで録った素材を編集、クラブ・ミュージック寄りのアプローチを採用した“レオ”など、これまでには見られなかったタイプの楽曲も。オーソドックスなロック・バンドとしてのスタイルをキープしながら(全員、本当に演奏が上手い)、従来のイメージを気持ちよく壊していくような感覚を備えていることも、このアルバムの魅力だろう。

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掲載: 2009年11月25日 18:00

文/森 朋之

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