ほたる日和(3)
いい意味で裏切りたい
――ほたる日和で表現したい、基本的な世界観については?
早川「それは割とハッキリしてますね。まず曲に関して言うと、自分の内面を描きたいっていうのが基本なんです。あと、自分とは対極にあるものを作りたいっていう気持ちもあって。そのふたつは結局、どちらも自分のなかにあるものだと思うんですよね。たとえば完全なファンタジーとして曲を作ったとしても、そのなかに自分がいれば大丈夫というか。まず自分ありき、ですね」
――なるほど。メンバーから見て、早川さんってどんな人なんですか?
あやこ「……新聞みたい」
――どういうこと(笑)?
あやこ「芸能欄もあれば、テレビ欄もあれば、政治のことも書いてある、っていう感じですね。いろんなことを知ってるし、それが全部好きなんだと思います」
早川「そうですね(笑)。サッカーは好きだけど、〈サッカー・ファンだよね?〉って言われると、〈違うよ〉って言いたくなるんですよね。〈野球も好きだから〉みたいに」
――じゃあ、〈こういうバンドですよね〉って括られちゃうことにも反発がある?
早川「聴いてくれた人が意見を言うのは全然いいんですよ。何を言ってくれてもいいと思うし、それは嬉しいことなので。でも、それを自分たちで決めちゃいけないと思うんですよね。自分たちで幅を決めちゃうことほど、つまらないことはないので」
――これまで発表してきた作品もそれぞれに色が違いますよね、確かに。ファースト・ミニ・アルバム『カラフル』はポップなイメージが強い作品ですが、この時はどんなことを考えてました?
早川「〈カラフル〉っていう言葉を使いたかったんですよね、まずは。曲によって違った色を出す、どこから切っても違う色が見えるアルバムにしたかったというか。バラードだったり、切ない曲だったり、ポップに振り切った曲だったり」
倉橋「いま聴き直すと、いい部分もありつつ〈ここは変えたいな〉って思うところもありますけどね(笑)」
あやこ「まだ結成して1年くらいですからね。お互いにどういう人なのかわかってないところもあったと思うし」
倉橋「そう、探り合ってた。それが音に出てるんですよね」
早川「〈それぞれのメンバー meets ほたる日和〉っていう感じだったかも。いまもそうなんですけど、〈ほたる日和って何だろう?〉って突き詰めて考えてるんですよ。〈いまの振り幅はどれくらいか? どうしたらそれを超えられるか?〉って」
――セカンド・ミニ・アルバムの『ノスタルジック』というタイトルにも、ほたる日和らしさが出てますね。
早川「そうですね。〈ノスタルジック〉っていう言葉は確かに、僕らのイメージのなかにあると思うし。このタイトルも即決だったんじゃないかな」
あやこ「ほたる日和っぽいですよね。1枚目は〈自分たちとは何ぞや?〉ということを突き詰めたんですけど、2枚目では〈聴いてくれる人にどう受け止めてもらえるか?〉ってことも加味してて。そこで出てきた言葉が〈ノスタルジック〉だったんですよね」
早川「テーマとしては〈夏の恋歌〉っていうのがあって。カラフルでポップだけじゃないところを表現したかったというか」
――そして今年3月にリリースした4曲入りシングル“昨日の音色”は〈卒業、旅立ち〉がテーマ。
早川「卒業って、どこかに暗い影がつきまとってると思うんですよ。そういう悲しみを歌うのは、本来やりたかったことでもあって。何て言うか、明るいところにも絶対に影はあるじゃないですか。僕はむしろ、そこを描きたいんですよね」
――なるほど。“季節はずっと”によってほたる日和の存在を知る人も増えていくと思うんですが、これから先のことについては、どんなふうにイメージしてますか?
早川「型にはまらないで、自由な発想でどんどん広げていきたいですね。ほたる日和っていう名前を聞くと、〈楽しませてくれる〉〈ワクワクする〉っていうイメージが浮かんでくるようになったらいいなって。もちろん曲ありきなんですけど、エンターテイメントを追求していきたいです」
――お、まさかエンターテイメントという言葉が出て来るとは思わなかった。
早川「そうですよね(笑)。でも、じっくり聴かせる曲だけじゃなくて、ライヴで踊れる曲もあるし……」
倉橋「まだCDにはなってないんですけど、ライヴではけっこうそういう曲をやってますね」
早川「いい意味で裏切りたいというか、どんどん変わっていきたいですね。ビートルズも『Rubber Soul』と『Let It Be』では全然違うじゃないですか。でも、すごくポップだし、楽しめるものになってる。ああいう感じは理想だなって思います」
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