インタビュー

ギターウルフ(2)

歌うまではいろいろ抵抗がある

――せっかくなので全曲のエピソードを伺いたいんですが、“エジプトロック”はなぜエジプトだったんですか?

「10年くらい前から、エジプトでライヴをやりたいって思ってるんだよね。昔、初めてヨーロッパにツアーに行った時に、スイスで会ったプロモーターが〈オレ、エジプトでライヴやったことあるんだ〉とか言っててさ、〈オレもやりたい!〉って思ったんだよ。それから10数年経つんだけど、その気持ちがついに歌になった。近い将来、エジプトで黒いマントのおネエちゃんと恋をした時のために(笑)」

――ギターウルフとエジプト、相性良さそうですね。

「『ライヴ・アット・エジプト』っていうアルバムを出したいんだよ。ジャケットはもちろんピラミッド。ピラミッドの前で3人が革ジャンを着てラクダに乗ってて、ラクダには〈KAWASAKI〉ってやつ(バイクのエンブレム)をピシッと付けておく(笑)。裏ジャケは白いテントがあって、アラブの大富豪とかがデッカい座布団に座ってる前で、オレたちがダーッとなんかやってる。ジャケのイメージはあるんで、そろそろ実現したほうがいいなと思ってるんだけどね。一人でエジプト行って、ライヴができそうなところを探そうかって本気で思ってる」

――間奏のギターが、ちょっとサーフっぽというか。

「そうだね、まあ〈サイケデリック・中近東・サーフ・ガレージ〉(笑)」

――途中で入るセイジさんのシャウトも印象的です。

「砂漠の砂嵐が人の顔になってウワ~ッと動いたような感じ」


――映画「ハムナプトラ」みたいな?

「そうそう」

――“ワイルドレストラン”はどんなイメージで作ったんですか?

「最初は〈ロッキー・ホラー・ショー〉みたいな感じかな。主役がいて、エレベーターでドーッと降りてくる。そういうイメージで始めたけど、出来た曲はロマンティックなお兄ちゃんの話というか。男だったら誰でも必ずそういうのがあると思うんだけど、いちばん言いたいのはここだよね、(歌詞を指さして)〈星の下のワイルドレストラン 二人の夜はフライパンの上で ジュウ ジュウ 熱く 熱く 熱く〉。こっちは星の上から見てる感じ。夜の東京を見下ろして、灯りがついているところにはいろんなドラマが繰り広げられているんだなあって」

――曲のなかには〈カレーライス〉〈スパゲッティ〉〈ステーキ〉〈ジャンバラヤ〉といろんなメニューが出てきますが、これはセイジさんの好物だったりするんですか?

「まあね。ほんとは親子丼も好きなんだけど、〈親子丼〉って歌うとちょっとカッコ悪いなと思って(笑)。でも、メニューを歌詞に入れるのは少しだけ気合いがいる作業だった。一歩間違えるとギャグになってしまう(笑)。笑えるかもしれないけどロックとか、そのへんの瀬戸際みたいなところでどうしようかなと思って」

――セイジさんの言葉のセンスって独特というか、ロック的ダイナミズムを感じさせるんですけど、最後の曲名“デビルクチビル”もインパクトありますね。思わず口に出してしまいたくなる語感。

「それは結構前からアイデアを考えてて。最初、〈クチビル悪魔〉というタイトルだったんだけど、それは誰でも考えそうだよなと思って。ちょっとオレが作るもんじゃないなと。〈クチビルデビル〉も誰かが考えるようなタイトルだな、と思った時に〈デビル〉と〈クチビル〉がパカッと入れ替わって〈あ、これ!〉と思った。これはオレのもんだと。で、バッと歌詞を書いた」

――この曲って前半の1番、2番が男目線の歌詞で、後半の3番、4番が女性目線の歌詞ですよね。女性目線の歌詞は初めてだと思うのですが、書いてみてどうでした?

「なかなかできなかった。最初はちょっと恥ずかしくてね(笑)」

――歌詞に出てくる女性はいかにもヴァンプ(悪女)っぽい感じですが、セイジさんのなかではどんなイメージだったんですか?

「まあ、そんな感じかな。ブリジッド・バルドーみたいな。こう、細い煙草をふかしてて、フランス映画っぽい雰囲気で」

――間奏のギター・ソロがブルージーですが、ブルースを意識したところはあるんですか?

「そうなのかもしれないけど、あの間奏は男女の心の呻きというか……。ま、それを弾くことをブルースと言うけど、男の呻きと女の呻き、そっちを考えたほうが先ですね」

――男女の掛け合いを歌うのって、やっぱりいつもとはノリが違うもんなんですか?

「さっきも言ったけど、やっぱり男のオレが女のセリフを言っていいのかなあ、ってのがあってさ。曲が出来てしまえば何の問題もないんだけど、歌うまでいろいろ抵抗があって。それを解き放つ瞬間に、エンディングまでスパーッといく」

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掲載: 2009年12月24日 19:00

文/村尾 泰郎