インタビュー

ギターウルフ(4)

ギターウルフに変身するような感覚

――そういえば、最初のほうで「新しい感じの曲を作れた気がする」って言ってたじゃないですか。それって久し振りのレコーディングだったことも関係しているんでしょうか。

「いや、そういうのはとくに意識してないですね」

――ではセイジさんにとって、休養をとった1年というのはどんな年だったんですか?

「ギターウルフを始めて20年間経つわけだけど、毎日毎日、曲のこととか、そういうことにアンテナを張り巡らしてきて。なんか引っかかることねえかな? カッコいい曲できることねえかな? って、いつも思ってたんだけど、その1年はロックとかそういうことを全然考えなかった。ポカ~ッとしてた」

――セイジさんのなかでそういうことってありうるんですね、ロックとまったく縁がないって。

「いままではなかったね、そういうこと。だからこれまでできなかったこと、映画をいっぱい観たり、本をいっぱい読んだり、そういうことをしたらいろいろアイデアが生まれるかと思ったけど全然ダメだった(笑)。でも、入院っていう経験はけっこう良かったよ」

――どういうところが?

「病院でずーっとじーっとしてることとか、看護婦さんが優しかったりとか(笑)」

――看護婦さん重要ですね(笑)。ベッドでゆっくり本を読んだりしてたんですか?

「そう。みんなが当然のように読んでる太宰治とか芥川龍之介とか読んでみようと思って。読んだらおもしろかった。特に芥川龍之介がおもしろかったな。小学校や中学校の教科書に載ってたからちょっとは知ってたけど、ちゃんと読むのは初めてで。難解でわかりにくいのかと思ったら、すごいわかりやすかった。文章も切れ味が良くて素晴らしかったね」


――でも、そうやって休んだあと、音楽をやるためにテンションを上げていくのって大変じゃなかったですか?

「うん、まさしく。去年の11月ぐらい、まだオレがしっかり立てない時からスタジオに入ったの。で、いよいよ明日スタジオに入るっていう前の日の夜、寝る時に身体がゾクゾクゾクゾク。〈スリラー〉のヴィデオでマイケル・ジャクソンが狼になる時みたいに、いきなり動悸が激しくなってきて。なんか身体が獣に変わっていくような瞬間を味わった。〈明日からいよいよまたギターウルフにならなきゃいけない〉と思った瞬間に、いきなりそういうことが起きたんだよ。オレがギターウルフでいたってことは、こんなにもエネルギーを使うことだったのかとビックリしたね」

――勝手に身体が反応しちゃったわけですね。

「そうだね、勝手にゾクゾクゾクって。オレを待っている2人に対抗するだけのパワーを出そうと思ったら、それだけ大変なことになる。〈オレがギターウルフになるってことは、身体を変えなきゃいけないんだ〉ということが、その夜よくわかった」

――翌日は無事にスタジオに入れたんですか?

「うん、無事に。その夜に変身できたから(笑)」

――今年の4月には野音で復活ライヴも行われましたが、久しぶりのライヴの感想は?

「(観客に対して)素直に〈ありがとう〉って感じだった、感激したね」

――ライヴの前には不安もありました?

「まあ、多少は。でもほとんどなかったかな。もう始まったら客がどうだろうと関係なく必死こいてやるしかないですからね。そしたら客がウォーッて来てくれて、めちゃくちゃ嬉しかったよね」

――グッとくるものがあった?

「ありました、もちろん。いままでは結構〈客なんて〉みたいな、ちょっと突き放すような態度をとっていたこともあったような気がするけど。でも、あんなに一体感を感じられたライヴは久しくなかったね」

――それまでは、お客さんというより、自分自身と対決しているというような感じだったんですか?

「そうだね。そっちのほうが強かったかもしれない」

――12月から来年1月まで久しぶりのツアーが入っていますが、体調のほうはいかがですか?

「うん、絶好調です」

――では最後に復活ツアーに賭ける思いを。

「まあ、言えることは相変わらず〈気合い入れて全力でやる〉ってことだけでなんだけど。でも、新しい曲をツアーで、とくに“デビルクチビル”とか“エジプトロック”をみんなの前でやれるのを楽しみにしてます」

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掲載: 2009年12月24日 19:00

文/村尾 泰郎