インタビュー

YOUR SONG IS GOOD 『B.A.N.D.』

 

やっぱり楽しすぎるほど楽しい。でも最高にグッとくる。音楽と人生へのどうしようもないほどの愛をブチ込んだがむしゃらな大傑作が誕生! そのインスピレーション源になった作品もメンバーがセレクトしてくれたよ!

 

 

キーワードは〈蠢いてる〉感じ

前作『THE ACTION』がリリースされた時、それまで多くのリスナーが持っていたであろうYOUR SONG IS GOOD(以下YSIG)らしさみたいなものを痛快にひっくり返す、ストレートで衝動的なパンク・サウンドで迫ってきたことに度肝を抜かれたのが記憶に新しいが、ニュー・アルバム『B.A.N.D.』もまた、まったく違うヴェクトルで驚かされる。

「『THE ACTION』の曲と、それ以前の楽曲とはある意味で相反すると思ってたものが、実際にツアーに出てどちらもいっしょにライヴでやってみたら、『THE ACTION』の曲も昔の曲も同じ世界で共存しつつ、しかも元々あったものともまた違う感じに聴こえて。それが予想外でおもしろかったんですよね。あのアルバムを作ったことによってテンションのレンジを手に入れたというか……要するに、上はメチャメチャ高くてユルいところはすごくユルくて、そのどっちもアリだぞっていう。あのアルバムを出した意義として、そこがバンドにとっていちばん大きかった。それに前作は、テンションは高いけど整頓されたおもしろさみたいなところもあったんです。音数を極限まで削っていったりね。今回はその反動かもしれないけど、みんなの音が鳴ってる感じもあったほうがおもしろいんじゃないか?って。ツアーを経て生まれたレンジのあるバンド感というか……。キーワードとして、すごく曖昧ですけど〈蠢いてる〉感じっていうのを音源にパッケージしようと」(サイトウ“JxJx”ジュン、オルガン/ヴォーカル)。

ファースト・アルバムを録音した馴染みのあるスタジオでアナログ・テープ一発録りのレコーディングを敢行し、彼らのライヴでPAを務めるエンジニアがミックスを担当して作られた『B.A.N.D.』は、ここ1~2年のライヴでより強力になったバンド・サウンドを軸に、もう一度メンバーそれぞれが持つ多彩な音楽の嗜好を好き放題に詰め込んで出来上がった作品だ。ジャケットに描かれた6本の矢のように、各々バラバラな方向を向いていたとしても、しっかり根っこで繋がっていれば絶対におもしろいものに昇華できる!という力強い自信からくるものだ(と勝手にそう思っている)。例えばヨシザワ“モ~リス”マサトモ(ギター)作の“CATCH-AS-CATCH-CAN”。アフリカ音楽からの影響を強く感じさせるサウンドには、ヒリヒリとしたパンキッシュな勢いもあり、中盤に展開されるリズムの激しい応酬からはバンドの成熟も感じさせる、いまの彼らの魅力を象徴するような一曲だ。

「前作は、パンク・ロックのフォーマットをそのまま活かすのが当時の僕らにしたらすごく新鮮だったんですよね。そんなの他のバンドにしてみたらあたりまえのことかもしれないですけど(笑)。だけど今度はまた違うアプローチで違う道具を使って、だけど熱量は同じっていうか。プリミティヴなフレーズを鬼の形相で弾くみたいなすげえハイテンションだし(笑)、もちろん『THE ACTION』以前のYSIGではなく、いまの俺らでやるっていうところですごく新しく感じたんです」(JxJx)。

7分近くの(彼らとしてはかなり長い)“UNBREAKABLE”などにも、ここ最近のライヴがよく反映されている。

「曲のなかに静と動を同居させる感じ。それもいままでにはちょっとなかった感じで。前作に入ってた“THISプラネットにて”を、ライヴでかなりアレンジを変えたんですよ。外に放出するだけじゃなく、内に向かっていくテンション。そういう表現方法もアリなんだって思うと、いろんな曲が出来るんだなと。だけど思えば、バンドを始めたばかりの頃もそういうのやろうとしたんですよ。結成2年目ぐらいの時。でも、その時は静の部分だけだった(笑)。だけどいろんな表現をやってくると、なるほどああいうやり方もいまやったらおもしろいかもなって思った部分はありましたね。“UNBREAKABLE”なんかは、そのへんの時代の空気もちょっと入ってたりしつつ」(JxJx)。

 

愛と音をはき違える

昨年リリースされたYSIGのDVD「PLAY ALL!!!!!!」にもしっかりと刻まれていたが、彼らは10年を超える歴史のなかで、常にその時々の衝動に真正面からぶつかり、スクラップ&ビルドを繰り返しながらバンドの幹を太く確かなものに成長させてきた。

「1曲目の“B.A.N.D.”はそのDVDのテーマ曲として作ったんですけど、バンドって楽しいことだけじゃないし、だけどバンドがおもしろいって思える本質っていうのは何だろうなって自分なりに考えた時、〈懲りもせずに生き返る〉とか〈愛と音を履き違える〉っていうフレーズにもあるようにすごくポジティヴな部分でもあるし、すごく面倒臭い部分こそがそれであって」(JxJx)。

すべて受け入れたうえで、あえて面倒臭い道を選んでしまった男たちの〈業〉みたいなものと言おうか。それは本作に収録された4曲のヴォーカル・ナンバーにも色濃く表れている。前述した表題曲にはじまり、シライシ“シライシ”コウジ(ギター)作詞の“WE ARE”は彼ならではの生活感が込められた楽曲だったり、モ~リス作の“OUR LIFE”とJxJx作“THE LOVE SONG”は、すべての愛すべきボンクラどもが共感するであろうストレートなラヴソングだったり……いみじくも〈LIFE〉と〈LIVE〉と〈LOVE〉についての歌が並んだ。

「僕もある意味では、音と愛をはき違えた人間なんだけど(笑)、この1年は〈自分対音楽〉の時間がすごく長くなったんですよね。だから曲もやたら多く作ったし、自分が作る曲に込めるものがより強くなったというか、音楽に逃げ込むというか……音楽への対し方が思いっきり体当たりな感じで。ずっと自分が考えてるバンド像とか人生とか歩いてる道って、いつまでもレールが続いているようでいて、実はまったくそうじゃない。何ていうか、ずっとアドリブで芝居やってるようなもんなんだなって。台本があってその先のストーリーがあるようで、本当はまったく決まってない。そこでみんなが次々にアドリブ合戦してるから新しいストーリーが生まれてくるんですよね」(モ~リス)。

ユーモアとアイロニーが飛び交う、命懸けのカーニヴァル──『B.A.N.D.』という言葉の奥に、きっと〈L〉からはじまる4文字を感じ取ることができるだろう。

 

▼ヨシザワ“モ~リス”マサトモが参加した作品を紹介。

左から、伊藤ふみおの2009年作『MIDAGE RIOT』(ソニー)、LOW IQ 01のバンド・メンバーとして参加したコンピ『NO MUSIC, NO LIFE. SONGS』(rhythm zone)

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掲載: 2010年03月23日 19:20

更新: 2010年03月23日 19:26

ソース: bounce 318号 (2010年2月25日発行)

インタヴュー・文/宮内 健