INTERVIEW(3)――終わりを肯定した曲
終わりを肯定した曲
――ちなみに、オリジナル曲をやりはじめる前のコピー・バンドでは、何をやってたんですか?
藤崎「銀杏BOYZ、BUMP OF CHICKEN、the band apart」
中島「サザン・オールスターズ」
深瀬「みんなが好きな……っていうか、最近共通点が見つかったんだよね。BUMP OF CHICKENは“プラネタリウム”をやったんですよ。で、銀杏BOYZは“銀河鉄道の夜”、the band apartは“星に願いを”、サザンは“真夏の果実”。そういうファンタジーでロマンティックな……」
中島「キラキラしてる」
深瀬「という括りだったと思うんですよね」
――それはオリジナルにも繋がってる。
藤崎「どうしてその曲が好きなのかをひとつひとつ分析して、活かしてると思います」
――それは例えば、キラキラしているものに対する憧れがあったりとか?
深瀬「うーん……趣味?」
藤崎「趣味だよね。単純に、寝ないで文化祭の作業をしてる時のあのキラキラ感みたいなのあるじゃないですか。ああいうものが好きだから集まった団体であって、だからだからそういう音楽が好き、みたいな」
深瀬「最初、そのclub EARTHのスタッフを集めてご飯とか食べた時に、ここ真っ暗にして、プラネタリウムを天井に照らして、みんなで絨毯かなんか敷いて寝っ転がってたんだよね。それで歌を歌ったりして。イカれてるけどね(笑)」
中島「カルト的だよね(笑)」
深瀬「(笑)そういうのが好きなんですよね。僕、そこらへんだけ変わってるなあって、自分で思いますね」
――(笑)で、それからオリジナルの曲に移行していったと。まずは、ヘヴィーな歌詞とポップな楽曲とのバランス感覚が印象的だな、と思うのですが。
深瀬「そうですね。つらい時こそ笑え、みたいなところはあって。僕はけっこう、いろんなことを赤裸々に語っちゃうんですけど、人によっては〈すいません、つらいこと訊いちゃって〉みたいなのがあるみたいで。でも実際は、僕、それを乗り越えちゃってるから全然つらくはないんですよ。どっちかっていうと、自分の自信になっているというか、名札につけて歩きたいぐらいな感じで。病院に入院した頃の僕を知ってる人からは、〈よくもまあ、ここまで普通の人間になったよね〉とか言われるんですよね。だから、ちっとも哀しくないし、苦しくないし、もはや嬉しいし、楽しいし、っていう感じがあるんです。ただ、僕の生きてきた人生は、〈アハハ、オホホ〉みたいな感じではなかったんで、嘘は書けないなって思った時に、こういう言葉が出てきた」
――はい。
深瀬「これを、あの時の気持ちのままメロディーに乗せちゃったら……何ていうか、俺の体験がホントに暗くて、なかったほうが良かったような過去、みたいになるのがすごく嫌で。やっぱり、世界の終わりというバンド名も〈終わりを肯定した曲〉というか、終わりから始まった僕のファンタジー・ライフ(笑)があったからであって……変な話ですけど、〈希望ってどこにあるのかな〉と思った時に、絶望のなかにあるんじゃないかな、って思うんですよね。すべてなくなった時に、何かを始めてみようと思えた自分がいた」
―― 一度、全部なくしてしまったからこそ次が見えた?
深瀬「そうですね……あの時はどんなことを思ってたんだろう? …………まあそうですね。平たく言うと。もう恐いものがなくなったっていうのがあって。一回終わっちゃってる、って思ってるんで、人生が。いまさら恐がるものもないし、守るものもいまのところ別にないわ、っていう状態から始めたんで、そういった強さっていうものはものすごくあると思うんですよ。だから、悲しい顔して泣くことはないと思ってて。ファンの女の子とちょっと話す機会があった時に〈泣きながら笑顔になる音楽〉って言われたことがあったんですけど、〈ああ、僕はそういうことがしたかったんだな〉って思って。人生をそうやって見てるところがあって。泣くんだったら笑ってたほうがいいやって。だから、メロディーと曲調はすごい明るめに設定してます」