インタビュー

THE BAWDIES 『THERE'S NO TURNING BACK』

 

ロックンロールの真髄を、徹底的に自身へ叩き込んだ4人。その強固なベースの上に吐き出す彼らの音楽がとうとう転がりはじめた――これがTHE BAWDIESです!

 

 

8人で作ったようなアルバム

3月に実現したボブ・ディランの東京公演の最終日、開演前の会場でTHE BAWDIESのROYに会った。初めて体験する御大のライヴを前にワクワクしている様子だった彼。そこで、まずは初ディランの感想から尋ねてみた。

「ヴェテランになると何となくクセとか雰囲気でやってる人たちもいますけど、すごいちゃんとしっかり鳴らしていてカッコ良かった。しかも、あれだけずっとやり続けていて、いまもまだここにいるわけでしょ。励みになりますよね、単純に」(ROY、ヴォーカル/ベース)。

じゃあ、THE BAWDIESも30年、40年やり続けたらディランみたいになれる? そんなふうに返してみると……。

 「いや、今回のアルバムはまさにそういう意味ではそのための第一歩なんです。ここからがホントのスタートなんです」(ROY)。

考えてみたら、このバンドのメンバーはROY、JIM、MARCYの3人が小学校からの幼馴染み。TAXMANも高校からの仲間なので、すでに10年~20年近くに渡ってツルんでいる計算だ。いまでも普段から仲良しの彼らは、気に入った音楽や好きな音の感覚を共有し合いながら信頼関係を強めてきた。

「今回のアルバムにはそういう部分がすごく強く出てると思いますね。ずっといっしょにいた俺ら4人がここにいるよっていう」(JIM、ギター)。

「僕らは自分たちの楽しい雰囲気を音楽で伝えるための土台を、時間をかけて作ってきた。その結果、今回は渡辺亮、舟山卓、木村順彦、山口雅彦という4人のパーソナルな部分を、ルーツ・ミュージックでしっかり鍛え上げたROY、TAXMAN、JIM、MARCYで表現できるようになったんです」(ROY)。

そういう意味でも、ニュー・アルバム『THERE'S NO TURNING BACK』は生身の自分たち4人+THE BAWDIESのメンバーとしての4人=8人で作ったような作品、と口を揃える。確かに彼らはオーティス・レディングやサム・クック、ソニックスなどのリズム&ブルース~ソウル、ロックンロールに対する愛着を強く持っている連中だ。だが、そうした偉大な先輩たちを無邪気にリスペクトするような浮ついた思いで活動していたことはただの一度もないと断言する。長い間、心酔するルーツ・ミュージックのマナーやスピリットを身につけるため、ただただストイックにその吸収と咀嚼に専心してきたというのだ。

「それが辛いとか、もっと自分たちを出したいと感じたことはなかったんです。でも、だからこそいまの自分たちがいるんだと思います。で、去年『THIS IS MY STORY』を出してTHE BAWDIESのサウンドが出来たなって自信がついて。で、サウンド面が出来上がったなら、それと同じくらい重要な何かを備えたアルバムを作ろうということになった。その時に、よし、いよいよいままで出さないでいた自分たちの人間性を作品で見せていこう!ってことになったんです」(ROY)。

 

ポップな人間性がそのまま出た

確かに、ここには普段からじゃれ合うような4人のキャラクターが見え隠れする。レコーディング中の笑い声やジョークを飛ばし合う様子がそのまま封じ込められているのではと思えるくらい、ルーズでタガが外れている部分もある。だが、そこが良い。〈本格的リズム&ブルース・スタイルのロックンロールを聴かせるバンド〉といういままでの彼らにはない、言ってみればヒューマンな感触。それは驚くほどメロディアスでポップな曲調にも表れている。

「そこは今回のアルバムのもうひとつのコンセプトでしたね。いままでのTHE BAWDIESって、〈ロックンロールで踊る〉というのがキーワードだったんですけど、去年出したシングル“IT'S TOO LATE”が僕らとしても意外なくらいすごくキャッチーなメロディーの曲で、それがライヴとかで受け入れられたのを見て、〈歌って踊れるバンド〉でいたいなって思えたんですよね。しかも、僕らの人間性ってクールじゃなくてすごくポップ。それがそのまま出たんですよ」(ROY)。

「まだ俺たちがルーツ・ミュージックを聴いてなかった頃、中学とか高校の頃にROYが好きで聴いていた音楽の要素がメロディーとかにも出てますからね。例えばHi-STANDARDとか。〈あ、出たな〉ってすぐ気付きましたけど、そういうのが自然に出たことが嬉しかったですね」(JIM)。

ライヴやツアーを多くこなすことで、彼らは闇雲に足腰を鍛えるだけではなく、きっと感覚もより柔軟にさせてきたのだろう。大きく2回に分けてレコーディングを行ったそうで、バンドとして進化しつつあるその移り変わりのプロセスも伝わってくる。新しいTHE BAWDIESへの道程と現在。それが〈後戻りできない〉という意味が与えられたこの新作ではないだろうか。

「バンドはこうじゃないといけない、という価値観から解放されたというのも大きいですね。何も全員がレコーディングに参加してなくても、ドラムが鳴ってなくても曲がそういうアレンジを求めているならそれでいいじゃんって」(TAXMAN)。

「“HOT DOG”は〈ロックンロールで楽しもうぜ〉ってことをサウンドだけじゃなく、歌詞でも伝えているんです。前は歌詞にそれほど大きな意味を持たせていなかったんですけど、いまは言葉でもちゃんと残したい。そこもいまの新しいTHE BAWDIESなんですよね」(ROY)。  

 

▼THE BAWDIESが参加した作品を紹介。

左から、LOW IQ 01のトリビュート盤『HELLO! LOW IQ 01』(cutting edge)、セックス・ピストルズのトリビュート盤『P.T.A~ピストルズ・トリビュート・アンセム』(Vine Yard)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2010年04月20日 21:20

更新: 2010年04月20日 21:24

ソース: bounce 320号 (2010年4月25日発行)

インタヴュー・文/岡村詩野