INTERVIEW(1)――成長過程が見える〈スペシャル・アルバム〉
成長過程が見える〈スペシャル・アルバム〉
──今回のアルバム『Blacrystal』は、未発表/未CD化の音源をを収めたものということですけど。
「そうですね。デビューしてから配信などでリリースしてきたものや、制作はしていたけれどいつ出そうかって考えながらずっと温めていた曲たちをまとめたものですね。私の本線とはちょっと違った曲も入っているので、〈スペシャル・アルバム〉みたいな言い方が合ってるのかな?って思いますね」
──でもまあ、未発表/未CD化の音源と言われなければ、オリジナル・アルバムと謳っても全然構わないような、バランスの良い内容ですよね。寄せ集めた感じはまったくしないので。
「そうですか!? それは良かったです。作った時々の心情が表れた曲たちの集まりなので、SATOMI'の成長過程が見えるというか、そういうふうな感じのアルバムにはなりましたね。最初の頃に書いた曲とかは、心の余裕があまりなかったというか、落ち着いてなかったり……」
──まあ、落ち着いてないのがあたりまえの年頃ですよね(笑)。
「そうですよね(笑)。当時はまだ山口の実家に住んでいて、そこから福岡の高校に通って、UKデビューするにあたってロンドンを何度も往き来してて。で、さらに東京でも制作してっていう、結構パニクってた状態だったので、心に余裕のない様や、余裕が作れたらいいなあっていう気持ちを歌った曲がわりとありますね。『Angelite』や『Daisylight』を作っていた頃の曲になると、自分がやるべきこと、伝えるべきこと、アーティストとして何をするべきなのかっていう自覚を持てるようになってきてたので、当然のように視野も広がっていって。繰り返しにはなりますけど、こういうふうにしてSATOMI'は大人の階段を昇ってきたんだなっていうのを垣間見られる(笑)、そういう感じのアルバムですね」
──ロンドンには住んでいたわけでは……そっか、まだ高校生でしたもんね。
「そうなんですよ。休みを利用して2週間ほど行っては戻って、しばらくしてまた行って、今度は東京行ってみたいな。相当ハードでしたね(笑)。でも、この仕事をしてなければ絶対に体験できないことばかりでした。普通じゃ出会えない人、自分が好きで聴いていたアーティストにも出会えたりとか、そういうところでパワーをもらえたし、この人がこれだけがんばってるなら自分もがんばらなきゃな、っていう気持ちも湧いてきて。本当、周りの人たちや環境には恵まれてましたね」
──『Blacrystal』の話に戻りますけど、とにかくいろんなテイストの曲があって、ひとくちにR&Bやヒップホップの文脈で語れない作品ですよね。
「自分がもともと聴いてたのはコアなヒップホップやR&Bだったんですけど、そうは言いながらもいろいろと挑戦してきたっていうのが大きくって、まとまってないっていったらあれですけど、でも、逆にそれがおもしろく聴こえるんじゃないかなって思うんですよね」
──なかでも“Journey”や“Pink Switch”といった曲は、いままでの作品であまり聴かれなかったタイプの曲じゃないかって思うんですよ。“Journey”はAOR的なニュアンスだし、“Pink Switch”は80年代のメロウ・ソウル風だったり。ご自身で特に気に入ってる曲はありますか?
「まあ、どれも気に入っていて聴き親しんでる曲ではあるんですけど、1曲目の“Drama”はライヴとかでも結構歌ってるので、思い入れが強いかもしれないですね。パンチのある感じも好きだし」
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