インタビュー

INTERVIEW(2)――歌を通して何かを伝える歓び

 

歌を通して何かを伝える歓び

 

SATOMI'_A2

 

──話は変わりますけど、SATOMI'さんはもともとダンサーになるのが夢だったそうですね。

「そうなんですよ。母親がブラック・ミュージック好きで、常に家のなかでヒップホップとかが流れている環境だったんですね。で、小学校2年生の時にジャネット・ジャクソンにハマって、それで。ジャネットの“If”っていう曲のPVは、録画したヴィデオが傷むぐらい観ました(笑)。音楽を始めたのは母からの影響がいちばん大きいですね。母の友達にはDJやダンサーも多かったし、普通、胎教でクラシックを聴かせるっていうじゃないですか? それがうちではヒップホップだったみたいで(笑)」

──ダンサーの夢がシンガーに変わったきっかけもあらためて聞かせてもらえますか。

「UKでリリースする前に、〈MIDEM〉っていうフランスの音楽見本市にシンガーとして出させてもらったのがきっかけですね。福岡でダンスをしていた頃、とある方の薦めでヴォーカル作品を録音したんですけど、それを気に入ってくださったいまの事務所の方が、エントリーしてくださったんです。〈MIDEM〉にはBONNIE PINKさんや東京エスムジカさんが出演されてて、そこに無名の女子高生っていう! で、カラオケで知り合いを前にして歌うことも緊張していたような私が、初めて大きなステージに立って、人前で歌うことってこんなに気持ちいいことなんだっていうのを知ってしまったんですね。歌を通して何かを伝える歓びみたいなものとか……なにか、いきなりスイッチが入っちゃったんです」

──で、シンガーとしてまずはUKでデビュー、と。その後、国内デビューを果たしてからもコンスタントに作品をリリースしてきたわけですけど、昨年、ベスト・アルバム『The Best』をリリースしましたよね。これは二十歳のメモリアル、という意味合いでもありましたか?

「そうですね、二十歳の区切りで出したいっていうのはありましたね。そこから先は、もっともっと視野を広げていきたいっていう、次の段階に向かうためのステップという意味もありましたし」

──実際に二十歳を過ぎてから歌い方や音楽への向き合い方は変わってきてますか?

「まだ意識したことはないですけど、無意識のうちにあるかもしれないですね」

──『Blacrystal』は過去の曲で構成されているアルバムとは言え、なんとなく次のステップを窺わせるような、新しいSATOMI'を見せている部分もあるんじゃないかと感じます。ちなみに、もっとも昔に作られた曲はどの曲になるんですか?

「“Strong”ですね。これは日本デビューして間もない頃の曲です。いちばん最近作ったのが“Squall Of Tears”。これでも4年前になりますね」

──“Squall Of Tears”は、会いたくてもすぐに会えない寂しさであったり、東京で一人暮らしを始めた頃の心情を描いた曲だそうですね。東京暮らしはいつ頃から始めたんですか?

「学校を卒業してちょっと経ってからです。いま2年目ぐらいですかね」

──東京に住んでみるといろんな刺激があるかと思いますが。

「そうですね、そのいろんな刺激から影響を受けたものを言葉にしてるっていうのもあるし、あとは、東京で一人暮らしを始めた時のこととか、自分の過去を掘り下げるようなこともするようになりましたね。“Squall Of Tears”はまさにそういう曲で、ロンドンを往き来してる頃、友達とか家族とかとゆっくり話せる機会がなくなったりしたんですけど、そういう時の気持ちも思い出しながら書いてたりするんですよね。でも、この曲は自分だけの世界にしたくなかったというか、対象にしてる〈君〉が恋人のことであってもいいし、友達でも家族でもいい、聴いてくれる人それぞれがいろんなイメージで向き合えるもの、っていうことを意識して書きましたね」

 

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掲載: 2010年04月21日 17:59

更新: 2010年04月21日 18:08

インタヴュー・文/久保田泰平