インタビュー

LONG REVIEW――SATOMI' 『Blacrystal』

 

SATOMI'_J170

昨年のYOUNGSHIM『Distance』や為岡そのみ『MOVIN ON'』、今年の幕開けを飾った山口リサ『Explosions』……などなど、最近の邦R&B界隈からは、センセーショナルなトピックはないものの素直な良曲が詰まったアルバムのリリースが続いている。目新しい要素の注入はさて置き、いい歌と気持ち良いサウンドを届けることに腐心したこれらの作品は、容易に風化しない普遍的な魅力を湛えているし、それはポップ・ミュージックとしてひとつの理想的なあり方のはず。そして、すでに中堅と言って良いキャリアを持つSATOMI'の今回のアルバム『Blacrystal』も、まさにこの系譜に連なる一枚と言えるだろう。長く愛でられそうな充実作だ。

ハイファイな鳴りのシンセが切り込んでくる“Drama”みたいな現行のR&Bに寄った楽曲もあれば、メロウに溶解する“Pink Switch”のような90'sマナーのナンバーもある。時代やスタイルを問わずスムースなサウンドを揃え、極上のアーバン・ポップを作り上げている。着うた戦線にアピールし得るバラードも大仰でウェットな展開には陥らず、ソウルの温もりをほのかに感じさせる仕上がりなのが嬉しい。

彼女は、主にケータイ経由で音楽を楽しんでいるような若い世代からの着実な人気を得ているようだが、世間一般においてはまだ広く知られる存在ではないだろう。しかし、その洗練された音世界は、むしろ大人のリスナーにこそ響く部分もあるはず。もし、ギャルの聴く音楽……みたいな偏見でスルーしている人がいたら、それはあまりにもったいない!

 

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掲載: 2010年04月21日 17:59

更新: 2010年04月21日 18:08

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