インタビュー

INTERVIEW(1)――曲を作ることはライフワーク

 

 

曲を作ることはライフワーク

 

――アーティスト活動に一息ついて以降はSMITH-CNのアルバム(『“yumenokakera”~PIECE OF DREAM~』)ほか、周辺アーティストのレコーディングのバックアップに専念していたよね。

「何て言えばいいかよくわからないけど、ホントただ友達を助けること、自分たちの好きな音楽を守ることしかやってないです。でも、子供っぽいんすけど、いいトラックをずっと人に横流ししてると、なんかすっごいイライラしてきて(笑)」

――じゃあわりとすぐにラップを再開した?

「ブログに〈(またラップ)やるぞ〉みたいなことを書いた時までは封印してたけど、そこから先は毎日ちょこちょこ時間を見ては音楽に向き合ってました」

――それでまた曲も書きはじめたっていう。

「ただ、それは若い頃からいままでまったく変わってない。(リリックは)毎日書いてるし、こないだもGEEKの(DJ)EDOくんに〈ヴァース欲しい〉って言われて、パッて行って〈どのヴァースがいい?〉って言ってキックして選んで、〈じゃあこれで〉って感じ。多くのラッパーがそうだと思うんですけど、1ヴァース単位だったらヤバいやつはいっぱい持ってるから」

SEEDA_A1
写真/北岡一浩

――そういう意味では先のアルバムをもって〈引退〉っていう言葉がそもそもそぐわなかったのかもね。

「自分のいけなかったとこだと思うんすけど、言わなくていいこともあったかもしれない。〈引退するって言うより休止するって言ったほうがいいじゃん〉って言ってくれた人もいっぱいいたし、僕が関わらせてもらった人も〈その間に俺らが目立っちゃうからな〉ぐらいの勢いで言ってた。もちろんバレバレだと思うけど、(ラップは)すごいやりたかったわけで。ただ、自分がやりたいレヴェルに行くのにいまの自分と差があるから、いろいろやりつつも〈ラップ上手くなりたいなあ〉とは思ってて、ちょこちょこ練習したり」

――その結果、新しい曲も生まれてきた?

「そうですね。新しい曲もちょこちょこ作ってます。僕のスタイル的に、曲を作ることはライフワークみたいなもん。極端なこと言えばプロじゃなくてもいいから毎日普通に音楽やって、(たくさんの)人に聴いてもらわなくても、例えば身近な人に作った曲を聴いてもらえればいいし」

――休止の間に生活環境の変化もあったんだよね。それも含めて、活動を休止する前と後で曲に書くこと、曲にしたいことの変化はあった?

「毎日気分によっても(書く内容は)変わっちゃうし、生活が変わるとやっぱり変わる。彼女のこと考えて、いっしょに住んでる人のこと考えて、親のこと考えて、お金を稼ぐことを考えてて、好きな音楽を大事に守るようにがんばってみたいな(笑)」

――東京から距離を置いた場所に居を構えたのには何かわけがあったの?

「どう見えるかわかんないけど、お金よりも自分の好きな音楽やりたいだけなんで、邪魔なエフェクトがいらないっていうか。東京は多いから、情報量も。しかもいまなんてネット繋げたらもう速攻グローバル社会になっちゃうから、情報に取り込まれちゃう。あとは彼女の生活を考えて……家庭的なことが理由でヒップホップとは関係ないっすよ、これ(笑)。ヒップホップとは関係ないっす」

――ははは。でも、環境の変化も音楽観が変わる一端になるんじゃないかなと思って。

「うーん、そこは変わったっぽいっすね。それはぶっちゃけ歌詞で言いたいけど。時代も自分の人生も、フッと変わるんじゃなくてグラデーションみたいに変わっていくから、半年前のこともまだ振り返れない。変わってると思うんすけど、引っ越す前と何が変わったかって言ったら、まだちょっとわからない。ただ、気は楽になったっす」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2010年04月28日 17:59

更新: 2010年04月28日 18:05

インタヴュー・文/一ノ木裕之