INTERVIEW(1)――フレッシュなテイク
フレッシュなテイク
――すごいバンドですね。とにかくグルーヴがいいし音がいい。
「いいんですよ。うまいからね、そもそもが」
――最初からイメージはあったんですか。今回のアルバムは〈シンプルなバンド編成で、ストレートに録ろう〉みたいな。
「うん、ありました。たとえばボブ・ディランのレコーディングとか、あんまり細かいところにこだわらなそうじゃないですか。しかも時々間違えてたりする、ああいうのがすごい良くて。間違えたところを大事にしたいと思ったんですよ。間違えてるCDって、最近ないじゃないですか」
――ないですね(笑)。確かに。
「でもさ、ディランの『Blonde On Blonde』を聴いても、ストーンズの『Beggars Banquet』を聴いても、間違ってるから。〈何でこのテイクOKにしたんだろう?〉とか思うんだけど、あれが最高なんですよ。間違いはともかく、テイクとしてすげぇいいじゃんっていうジャッジが絶対あったはずなんですよ。もう、聴くたびに絶対間違えるから。あたりまえだけど(笑)。それがね、すごくチャーミングなんです。ロックンロールなんです、僕にとって」
――なるほど。
「だからミュージシャンといっしょに〈せーの〉で音を出して、フレッシュなテイクを録ること。テイクもやりすぎない。ヘッド・アレンジで決めていくから、構成が決まるまでは〈適当にやってて〉って言うんですよ。〈本気出さないで〉って。〈じゃあ次で決めます〉と言って、そこでみんなに本気出してもらう。〈次で決めます宣言〉が出てからは、多くて3テイク。だいたいは1~2回で、〈はい出来た〉っていう感じ。そういうのがやってて楽しいし、楽だから。楽で楽しいことが大好きなんですよ。楽したいな、もっと(笑)」
――メンバーをあらためて紹介すると、ドラムスに小松シゲル、ベースに沖山優司、キーボードに奥野真哉、そしてギターとヴォーカルがYO-KING。だいたい年齢が近いんでしたっけ。
「沖山さんは上で、奥野くんと僕が同世代。小松ちゃんは大学の後輩で、5~6個下じゃないかな。小松ちゃん、良かったな。すごい良かった」
――前のミニ・アルバム『スペース~拝啓、ジェリー・ガルシア~』が非常にバラエティーに富んだ曲調だったので、アルバムはどうなるのかと思っていたら、かなり統一性がありますよね。あえて言うなら、〈フォーク・ロック〉というか。
「そうですね。そういう意味で、ボブ・ディランみたいな……実際どういうふうにレコーディングしてるのか、研究してるわけじゃないんだけど、なんとなくイメージで、さっと来てさっと録ってるみたいな、そういうセッション・アルバムにしたかったんですね。実際にレコーディングに入る前に思っていたイメージよりは、アレンジがちゃんとしちゃってるけど。いい意味で」
――もっとラフにするつもりだった?
「うん、もっとラフでいいかなっていう落としどころだったんだけど、意外とみんながいろんなアイデアを出してくれるので、アレンジがちゃんと固まってきたんですよね。よくあるじゃない、〈この間奏、誰なんだよ?〉みたいなのが、昔のロックの曲で。ああいう間奏を多めにしたかったんですよ、実は」
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