INTERVIEW(2)――歌ってて楽しい
歌ってて楽しい
――せっかくなのでパートに分けていろいろ訊いていきたいんですけど、まず〈歌手・YO-KING〉はどうですか。今回のアルバムでの自己評価は。
「歌手はもう、最高でしょ。とにかく喉の調子がすごくよろしいので、楽々すごいテイクが録れる。1日に2曲ぐらい録っちゃうから、歌ってて楽しいしね。歌ってると、〈脳がコントロールしてないな〉と思いながら歌ってる時があるんですよ。歩いてる時って、歩くって思ってないでしょ。ああいう感じで歌ってるんですよ。〈さあ声出そう〉ぐらいは思うかもしれないけど、そこから先は、歌ってないつもりで歌うというか。それはあの人が言ってて、影響を受けたんだよな、麻雀の鬼の桜井(章一)さん。あの人って、牌を持たないつもりで持ってるんだって。だからギターも、弾いてないつもりで弾いてる」
――何やら禅の心構えとか、剣の極意とか、そんな話に聞こえます。
「どの道を辿っても頂上の広場へ出るというか、麻雀だろうが音楽だろうが、そういうことなのかなって思いますね。それと、笑ってないけど笑ってるような人になりたいんですよ、僕」
――というと?
「見てると、〈別に笑ってないよね、YO-KING〉っていう感じなんですけど、目を閉じて心に思い浮かべると、〈YO-KINGはいつも笑ってるな〉みたいな、そういう人になれたら最強なんですけどね。“いつも笑顔で”という曲は、そういうことも言ってるんです。イメージとして、顔を思い浮かべると笑顔が出てくる。そういう人はモテますよ。モテたいんだったら簡単ですよ、いつも笑ってろということです。そしたら確実に、いまの3割増しでモテるんじゃないですか。余裕がある男ってモテるからね。余裕があるから笑えるわけだから。スケベ笑いじゃ駄目ですよ。大丈夫ですか?」
――大丈夫ですよ(笑)。たまには愛想笑いもしますけどね。
「愛想笑いも大事ですよ。たとえば〈あいつ、上司にばかり愛想笑いしやがって〉という人がいても、同僚にも部下にも愛想笑いをしておけば平等じゃない? 上司に愛想笑いができないような器の小ささでは駄目ですよ。酒場でくだ巻いて、〈俺は愛想笑いなんか絶対にしない〉とかいう奴は駄目です。みんなを気持ち良くさせないと。ライヴもね、出ていくと、お客さんが期待して見てるでしょ。そこで〈この人たちをなるべく気持ち良くさせるぞ〉と思って出て行くの。そうすると、そういう気持ちって絶対出るんですよ、雰囲気とかに。〈この人、私たちのこと楽しませようとしてくれてるわ〉って。その時点で、トンガッたロックとはかなり違ったところまできちゃったなという気持ちはあります」
――ああ、なるほど。
「トンガッて、〈俺はこれだけ傷ついたぞ〉みたいな歌を歌ってる、若い頃とは全然違う。海援隊に“思えば遠くへ来たもんだ”という歌がありますけど、そういう心境はありますね。僕もアマチュアの頃やデビューした頃、〈これだけ傷ついた〉みたいな曲はなかったけど、もうちょっとトンガッてたし、〈コノヤロー〉っていう気持ちでステージに上がってましたからね。ただ、若い頃にいまみたいな気持ちでやってたら気持ち悪いし、それはそれで、年相応にベストを尽くすのが大事だとは思います」
▼YO-KINGの作品
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