インタビュー

INTERVIEW(3)――超フィジカルでクソ力強い

 

超フィジカルでクソ力強い

 

――上野くんらしい視点は他の並びからもわかるっていう。

「例えばRIP SLYMEだったら、ファーストEPはみんな完全に黙殺してて、“白日”の12インチをDEV LARGEがヤバイって言ったからみんな一気に買うようになったけど、いいのは“白日”だけじゃない。(“風に吹かれて”で)ATOOSHYを客演で呼んでんのとかもすげえセンスが良かった。MELLOW YELLOWも、実は(アルバムで)ハード2オブテインのジャケットをサンプリングしたりとか超骨太なグループだけど、当時(MICROPHONE) PAGERが好きだった奴とかが気付かない部分もたぶんあったと思うんですよ。俺の周りでもそういう奴いたし、FG(クルー)あんま好きじゃねえっていう。“口から出まかせ”(『Egotopia』収録)が出るまではRHYMESTERも好きじゃねえって奴もなんだかんだいたし」

――ありがちな〈ハードコア志向〉と〈食わず嫌い〉的なやつね。

「お笑いラップとか言われてた脱線3のほうがイカチいこと言ってるしな、みたいに思って聴いてたし、MELLOW YELLOWのパーティー感は〈これが大学生ノリか〉みたいに思ってた、鬱屈してるんで(笑)。基本的にみんなスケボーやってる時に聴いてるから、モテない状態で誰も女とかいないし、先輩から抑圧されたまんまラジカセ聴いてる状態だったんで、そん時は響かなかったけど、(その後)聴いてみたら超しっかり作ってるし、それが機能する場所も見るようになって」

――そのMELLOW YELLOWもそうなんだけど、ここに入ってるような曲からは、ラップの初期衝動的なフィジカルな強さを感じるよね。下手したらいまの日本語ラップ全般以上に。

「それはすごい強いですよね。パーティー・ラップでもパワーを前面に押し出して、恥ずかしいことやってませんっていうのが伝わってくる。スチャダラもうまいこと言ってんだけど、超フィジカルなラップで当時からクソ力強かった。すげえ時代だったっていうか、そうしないと生き残れない時代だったのかなって勝手に想像しちゃう。いまナヨナヨしてる奴がラップしてることって、ナヨナヨしてんのしかないじゃないですか」

――そこはやっぱり時代とか、トラックとの兼ね合いもあるんだろうけど。

「ネタの掘り方、ドラムの打ち方、持っていき方……クボタ(タケシ)さんにしてもSHINCOさんにしても、もちろんMUROさん、(MUMMY-)Dさんにしても、狂った人ばっかじゃないですか。他の人に負けたくない感もすごいし。脱線3にしたって音の工夫がすごいし、パソコンのない時代にあんだけ工夫してビート組むのはすげえと思う。いまはいまでいいと思うんですけど、これはこれで味わい深い」

 

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掲載: 2010年10月20日 17:59

インタヴュー・文/一ノ木裕之