INTERVIEW(2)――歌になる瞬間
歌になる瞬間
――すごいモチヴェーションの高さですよね。実際、すごい曲が揃ったシングルだと思うし。まず“あさやけのうた”ですが、この曲が藤森さんから上がってきたときのhozzyさんの印象はどうでした?
hozzy「メロディーがすごい尖ってるというか。アレンジもギターが引っ張っていく感じで、決して柔らかいイメージではなかったんですよね」
藤森「メロディーもそうなんですけど、〈何かが引っかかる〉っていうものがあれば、あとはそれぞれの手に渡った後で楽曲が広がっていくというか。僕はきっかけを作るだけで、そこからみんなで、いいテンションで作り上げていくっていうのも今回の目標だったんです」
――まずはイメージを共有するところから始めて?
藤森「うん、それがいちばんですよね。それがないと、強いものは出来ないと思うので」
田中「“あさやけのうた”もそうなんですけど、グッとくるポイントっていうのがあるんですよ。アレンジするときも、そこは崩さないように意識するし。最終的に出来上がったものを聴いても、最初に感じたことは変わってないから、きっと全員に共通してるものもあると思いますね。〈ここがいいんだよね〉って話すわけじゃないんだけど」
渡辺拓郎(ドラムス)「この曲から個人的に自分が感じることって、他のメンバーと全部同じってわけじゃないと思うんですよね。だから演奏するときは、自分のなかにあるイメージ――それは視覚的なものだったり、匂いだったり、雰囲気だったりするんですけど――それを音のなかに落とし込むってことだけかなって」
――歌詞はhozzyさんが書いてますね。
hozzy「デモのときから、(藤森が書いた)基本になるような歌詞はあったんですよ。サビの〈あさやけのうた~〉のところ(〈あさやけのうた、絶望をすべて癒せるほど、この世界は安っぽくできてないだけ。〉という歌詞がある)もそうなんですけど、最初は〈あとで変えよう〉と思ってたんだけど、なかなか思い付かなくて。メロのハマリもいいし、無理矢理変える必要もないのかな、と。あと、勝手な全体像として〈冬っぽいな〉って思ったんですよね。冬の朝って、両極端じゃないですか。空気はきれいで澄んでるんだけど、同時に痛い感覚もあるっていう」
――矛盾した感覚が同時に存在してるっていう。
hozzy「作業が終わる時間帯も朝になることが多いんですよ。明るくなってきて、〈やべえ、もう寝なきゃ〉って(笑)。そのときの感じも違うんですよね、うまくいった日とうまくいかなかった日で。やり残したことがなくて、完結した状態のときは〈朝が来て良かった〉って思えるし、そうじゃないときは〈あ、朝が来ちゃった……〉って。そういうことを拡大していったら、おもしろい感覚になるんじゃないかなって」
――〈命が一つで良かった。〉っていうフレーズもすごいですよね。
藤森「そうですよね。〈もうひとつ命があったら〉って思うことはあるかもしれないけど」
――すごく肯定的だと思うんですよ。例えば〈死〉さえも肯定してしまう強さがあるというか。
hozzy「……それでも怖いですけどね、死ぬのは。でも、永遠に生きるのは耐えられないと思うんですよね。手塚治虫の〈火の鳥〉も、ぜんぜん幸せそうに見えないじゃないですか。最後は〈殺してくれ〉みたいな感じになるし、実際、そうなんだろうなって。死ねなくても、つらいことは積み重なっていくだろうし。もちろん、楽しいこともあるんでしょうけど……。そういう意味でも、うまくできてるのかなって思ったり」
――なるほど。藤森さんの最初のイメージよりも、大きな広がりを持つ曲になったんじゃないですか?
藤森「そうですね。僕らがやってるのはインストじゃないし、やっぱり〈歌になる瞬間〉があるんですよ。歌詞に気持ちが乗ったときって、それぞれの楽器もさらに前に出てくるような感じがあって、〈音楽をやってる、演奏してる〉っていう感じが強くなるんですよね。この曲はそのレヴェルまでいけたし、だからこそ、シングルとしてアリなんだろうなって思えたというか」
――そうですよね。ちなみに、hozzyさん以外のメンバーも朝まで作業してることが多いんですか?
田中「個人的な作業をやってるときは、そうですね。レコーディングに入ると、もっと早く終わりますけど」
hozzy「藤森は〈朝から夕方までやる〉っていうペースを守ってますけどね」
藤森「そうですね。なので、〈あさやけ〉はちゃんと朝起きて見ます(笑)」
――渡辺さんは?
渡辺「寝てるときはいつまでも寝てるし、起きたいときはずっと起きてますね! 思うままに行動してます」
hozzy「おまえ、羨ましいな(笑)」
藤森「2010年の目標が〈時間を守らない〉でしょ?」
渡辺「守らないじゃなくて、〈ギリギリまで時間を使う〉だよ。5分前行動をやめるというか」
――なんだそれ(笑)。
hozzy「いままで、真面目にやりすぎてたらしいですよ(笑)」
渡辺「いや、ドラムは堅いヤツよりも、おもしろいほうがいいと思って」
――その考え方が真面目ですけどね。
田中「そうですよね。〈よし、おもしろくなろう〉って(笑)」