INTERVIEW(3)――ファンタジーみたい
ファンタジーみたい
――では、藤森さんが作詞/作曲した“すべては僕の中に、すべては心の中に”について。これはいつ頃の曲なんですか?
藤森「えーと、2008年ですね。基本的なメロディーと大筋の歌詞はあったんですけど、アレンジに時間がかかって。この曲もメンバーの手に渡っていって、いまのベストのカタチになったんですよね」
――いろんな音が聴こえてきますよね。エレクトロ系のリズム、細かいリフ、小さなノイズ……聴き返すたびに〈あ、こんな音も入ってた〉っていう発見がある。
田中「そうですね。ほとんどはhozzyのプログラミングというか、打ち込んだ音なんですけど」
――トラッドっぽい雰囲気もあって。
hozzy「はい。あれは何て言うんだっけ? アイリッシュ……」
渡辺「フィドル」
hozzy「……って言う楽器なんかも入ってますね。実際に弾いてるわけじゃなくて、機材音源なんですけど。何て言うか、ずっと〈スピード感がほしい〉って言ってたんですよ。テンポ自体を変えちゃうと曲の良さがなくなっちゃうから、アレンジで工夫しようってことになって。スタッフからのアイデアで、冷たいというか、ちょっと無機質な音を入れたり、細かいリフを加えたりしてるうちに、スピード感が上がってきたんですよね。同時に、ちょっとファンタジーみたいになったんですけど(笑)」
渡辺「この曲から見えてくる映像って、やっぱり不思議なイメージなんですよね。たとえば公園のベンチに座って、景色を眺めてるとしますよね。普通だったら雲なんかが流れていくと思うんですけど、そこにいきなり――極端な話ですけど――ウルトラマンが飛んできたり。そういうふうに、あり得ないことが起きる感じはありますね」
――かなりブッ飛んでますよね。どう考えてもドラッグの影響だとしか思えない、中期ビートルズにも通じるような……。
hozzy「めっちゃクリーンですけどね、私は(笑)。確かにいろんなアイデアは試したし、そのぶん、時間もかかってるんですよ。それこそ〈あさやけ〉まで作業してる時期がずっとあって。思い付いたことをぜんぶ詰め込んだらわけわかんなくなるし、そこは何度も調整しました。楽しいんですけどね、やってるときは」
田中「ライヴでも何度かやってるんですけど、けっこうアレンジを変えてるんですよね。4、5パターンあるよね?」
藤森「うん。〈あさやけ〉と同じで、メンバー全員で作り上げることによって広がった感じはありますね。歌の内容自体はすごくあたりまえのことなんですよ、〈自分の考え方次第で、世の中は変わる〉っていう。いろんなアーティストやバンドが何度も取り上げてるテーマだと思うけど、それを僕らがやれる音楽のなかで、ひとつカタチにできたんじゃないかなって」
――藤森さんが書いたセルフライナーに、〈嬉しい出来事、宝くじが当たった時? 俺は嬉しくありません。本当です〉っていう文章があって。それも〈その人の考え方、捉え方次第で物事は変わって見える〉ということに繋がってますよね。
藤森「そうですね。宝くじが当たればホントは嬉しいだろうけど(笑)、いまはそれよりも、〈バンドとしていいものを作る〉っていうことのほうが大事なんですよね。〈いい曲が出来た〉って感じられる瞬間っていうのは、何よりも楽しいので。いちばん欲しいのは、それなんですよね」
――なるほど。hozzyさんはこの歌詞をどんなふうに捉えてますか?
hozzy「あの、〈胸の鼓動が数を重ねるたび/広がり続ける無限の可能性〉っていうところがすごく好きなんですよね。メロの感じと言葉の響きがすごく良くて……理由はわかんないんですけど。あと、ギターのリズムと歌のリズムが違うから、難しいです(笑)」
――そういうパターンの曲、多くないですか?
hozzy「多いですね」
渡辺「技巧派だから(笑)」
hozzy「そういうつもりじゃないんだけど。でも、この前PAの人にも言われたんですよ。〈普通のギターとはまったく違う使い方だから、大変だよね〉って」
田中「しかも、人前で弾いても〈上手い〉って思われなかったりするんだよね(笑)」
hozzy「このバンドでしか役に立たない」
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