インタビュー

LONG REVIEW――カゲロウ 『KAGERO II』

 

カゲロウ_J

資料には〈全曲3秒で即死確実〉とあるが、個人的には“ROYAL KLOVER CLUB”の冒頭のベースに――その破壊的な低音に、一瞬で持っていかれた。規格外のサウンドを聴くことができるのではないか。そんな予感を濃厚に匂わせて幕を開けるこの作品は、ギターレスのジャズ・パンク・バンド=カゲロウのセカンド・アルバム『KAGERO II』である。

そういった編成だけに、フロントで一騎打ちを繰り返すサックスとベースが中心……なのかと思いきや、そう甘い顔を見せてくれないのが彼ら。今年春に正式加入した菊池智恵子によるクラシカルなピアノ・リフも、確かなテクニックでボトムを支えるドラムスも、機を窺っては次々とフロントに食らいついていくという獰猛極まりないプレイ・スタイルだ。本作においては上述の“ROYAL KLOVER CLUB”から“CHEMICAL ONE”“AIR”まで初っ端から暴走しまくるが、それでも聴き手を振り落とすことなくガッチリと引き連れていくパワーとドライヴ感が強烈である。

また、サックスの情感豊かなメロディーがリードするミドル・チューンも前作以上に磨かれており、全12曲のうち約半数を占めている。だが、そうした〈静〉に振れた楽曲を随所に配置しながらも、エモーションにとことん忠実であることによって、彼らはグルーヴを途切れさせることなく、延々と火花を散らし続けている。

取材の際の〈いちパートが頭ひとつ抜け出そうとすると他パートが妨害しにかかる〉発言が異様に痛快だったのだが、その壮絶なソロが聴きどころであるし、聴けば恐らく、一撃で刺さるだろう。オフェンシヴなフォーメーションがえらく格好良いガレージ・ジャズ~ハードコア・パンクが並んだ本作。全編に充満している〈キナ臭さ〉が、これまたいい。

 

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掲載: 2010年12月08日 18:00

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