INTERVIEW(2)――日常では絶対に出ない、異常な空気感
日常では絶対に出ない、異常な空気感
――そして『KAGERO II』ですけど、選曲は今年作った新曲を中心にライヴでやってきた過去の曲を加えて、という感じですか。
白水「そうですね。何でファーストに入らなかったんだろう?みたいな曲もあったから、まずはそれを入れて、あと半分以上は新曲です。去年の頭にピアノが(菊池)智恵子に代わってからは、あまり曲を作っていない期間というか、どっちかというとすでにある曲の精度を上げる期間だったので」
Ruppa「精度を上げるのと、メンバーが変わったからこれをまた作り直そうというのと」
白水「そういう期間が長かったから、新曲を作るタイミングとしては今回すごく良かったと思いますね。本当にアイデアが一気にバーッと出て、〈こんなに1年間で溜まってたんだな〉と思ったし。ファーストでは“SCORPIO”がリード曲になってたけど、あれは2005年に作った曲なので、あれから5年経って今回のリード曲“ROYAL KLOVER CLUB”が出来て、〈こんなに変わったんだ〉という面と〈やっぱ変わってねえや〉という面と、両面あったんですよね。その両面あっての〈いま〉という感じの曲が出来上がったかなと思います」
――“ROYAL KLOVER CLUB”はヤバイです。鬼気迫る、という表現がぴったりくる気がします。
「“ROYAL KLOVER CLUB”とか“DUMMY”とかは、録ってる時の精神状態が普通ではなかったですね、全員。あとで客観的にその時の自分を見たくないような、異常な空気感だった気がする。OKテイクになるだろうっていうのは始める前からわかっていたというか、あの空気は日常では絶対に出ない。ファーストの時と録り方はいっしょだけど、レコーディングで気持ちを入れるやり方がやっぱり違うから、精神状態がより本当のライヴに近かったところもあるだろうし、もう一回やれと言われても同じものは絶対録れないだろうなと思いますね」
――ファーストの時にも言ってましたよね。「カゲロウのCDはその日のライヴだ」って。
白水「そうそう。その考えはいまだに変わらないです。同じ曲でも来年録ればまた違うだろうし、それはいい悪いじゃなくて、人間として違う時に録っているので。そこは自分でも改めてビックリしましたね、このアルバムを作って」
Ruppa「前の時よりは〈せーの〉でやってる感じは確かにしてたよね。全部一発で録っていてもブースは分かれているから、ガラスがあるっちゃああるんだけど、今回のレコーディングの時には隔たりをあまり感じないでやれてたかなと」
白水「そうだね。より同じ部屋でやっているような精神状態があったかな」
――今回はムーディーな曲や静かな曲もすごく良くて、たとえば“THE COLD”。あの曲のRuppaさんのサックスはたまんないです。
白水「メロディーは僕が作ったんですけどね(笑)。それを覚えないんですよ、この人は。何かの意思表示なのかと思うくらい」
Ruppa「普通に忘れてるだけなんですけどね」
白水「嫌なら嫌って言えよ、みたいな。それを吹かないことでメッセージを出してくるっていう面倒臭いやり方をしてくるんです、メンバー全員が(笑)」
――あと“WHAT’S YOUR NAME”で、ピアノのフリーフォームなイントロから入って、ベースが絶妙のタイミングで切り込んできてリズムが始まる、ああいう瞬間にゾクッときたり。
白水「あれは、ピアノは完全にアドリブでやっているんですけど、合図を送らないから、こっちは本当に〈いまか、いまか〉って構えてるんですよ。あそこで入るタイミングは、絶対にあとでくっつけられるものじゃないから。“WHAT’S YOUR NAME?”は前からあった曲なんですけど、智恵子のピアノになって、僕のなかでは作った時のイメージにちゃんとなった気がして、〈これは入れよう〉という感じだったんですよね」
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