インタビュー

LONG REVIEW――Kenichiro Nishihara 『Rugged Mystic Jazz for TALISKER』

 

Kenichiro Nishihara_J

90年代半ばから国内外のファッションショーで音楽ディレクターを務め、TVCMでの音楽プロデュースも数多く担当してきたKenichiro Nishihara。2008年には自身のレーベルであるUNPRIVATE ACOUSTICSを立ち上げ、ファースト・アルバム『Humming Jazz』、ステフ・ポケッツらをフィーチャーした『LIFE』という2枚のオリジナル・アルバムをリリースしている。

彼の作品の魅力は、流麗なピアノのメロディーとそれを支えるビートのシンプルなコンビネーション。そのビートからはヒップホップやジャズ、ソウルからの影響も漂ってくるが、そうした多様な要素がひとつの世界観のなかで調和している点からは、プロデューサーとしての彼の実力も窺えるようだ。

前作から1年足らずで届けられた本作『Rugged Mystic Jazz for TALISKER』は、シングルモルトウイスキー〈TALISKER〉にインスパイアされて制作されたというコンセプト・アルバム。マッコイ・タイナーやロニー・リストン・スミスといったジャズ・ジャイアンツの名曲からポリスの“Every Breath You Take”、シスター・スレッジの“Thinking Of You”までカヴァー曲も数多く収録されているが、そのいずれもが美しいピアノのメロディーに彩られており、オリジナルとも違った肌触りを持つ。また、余白を残しながら、繊細かつシンプルに作り上げられたサウンドは、情報過多の現代に生きる人々にとってはかなり新鮮に聴こえるはず。あらゆる場面のBGMとして威力を発揮しそうな、ほろ苦いメロウ・グルーヴ。その味わいをじっくりと堪能したい。

 

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掲載: 2010年12月15日 18:00

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