LONG REVIEW――NICO Touches the Walls “Diver”「NICO Touches the Walls TOUR 2010 ミチナキミチ」
メジャー・デビューから約2年半で、日本武道館における公演を成功させたNICO Touches the Walls。その後に彼らがめざしたのは、これまで行ったことのない土地のライヴハウスを訪れ、すべての公演でそれぞれ異なる新曲を披露するというツアー〈ミチナキミチ〉。そのファイナルである横浜BLITZ公演の模様を収録したのが、ライヴDVD「NICO Touches the Walls TOUR 2010 ミチナキミチ」である。アンコール含め全20曲のなかから厳選された7曲が収録されているだけに、歌の力で魅了するポップ・アクトでありながら、熱い演奏でオーディエンスの拳を突き上げさせるロック・バンドでもあるという、NICOの魅力が凝縮された密度の高い作品となっている。
そして、その〈ミチナキミチ〉の全7公演中、初日とファイナルのアンコールのみで披露されていたのが、ニュー・シングルの“Diver”。切迫感のある光村のヴォーカルと、〈ただの幸せに気づいたら もう二度と溺れないよ〉というラインが印象的なこの曲を聴いて改めて感じるのは、彼らの〈王道感〉である。“Diver”で聴くことのできる古村の堂々たるギター・ソロは、最近の若手ロック・バンドのプレイではあまり聴くことのないものだし、〈A・B・サビ〉という古典的とも言える曲構成で、特にBメロが楽曲の抑揚に重要な役割を果たしているあたりも、やはり王道。まだ20代半ばのフレッシュなバンドでありながら、こういった感覚も兼ね備えているからこそ、彼らは日本武道館とライヴハウスを自由に行き来することができているのだろう。
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