インタビュー

〈キング・オブ・R&B〉候補の有望株、タンクもニュー・アルバムをリリースしたぞ!!

 

R・ケリーの正統な後継者といえば、彼にプロデュースを仰いだこともディスを仕掛けたこともあるトレイ・ソングズが思い浮かぶが、プロデューサー/ソングライターという裏方的な側面も含めて先達に近い立ち位置にいるのがタンクだ。逞しくも繊細な抑制を効かせた歌唱はR・ケリーとまたタイプが違うものの、オーセンティックなR&Bの良さをスマートに届けてくれるものだ。

奇しくもRと同じくバリー・ハンカーソンにフックアップされ(てアリーヤに曲を書いて注目され)た彼はアンダードッグズにも所属し、これまでにクリス・ブラウンやオマリオン、キーシャ・コールらの楽曲を手掛ける一方、3枚の自作をヒットに導いてきた。その間にはアンダードッグズからの離脱もあったが、今回4枚目にあたる『Now Or Never』のリリースにあたってはバリーからも独立。自身の新チーム=ソング・ダイナスティと共に歩みはじめたのだ。

「いままでのすべての経験がこの瞬間に繋がっている。新しいレーベルとも契約したし、新たなエナジーと新しい仲間に囲まれて、プロデューサー、ライター、アーティストとして長年学んできたことのすべてを詰め込んで作ったアルバムなんだよ」。

この『Now Or Never』、当初は3作目の続編として『Sex, Love & Pain II: The All Night Experience』と題されていたらしく、そのコンセプトを伝える赤裸々な作りは継承されているようだ。絶品のスロウに仕上がった先行シングルからして“Sex Music”ときた。

「聴く人が共感してくれるから、俺のパーソナルな出来事を音楽に詰め込んだ。俺は自分の経験を歌う。セックス、人間関係、パーティー。どんな曲でも全部クラシックR&Bのテーマに基づいてるんだ。サウンドはトラディショナルだけど、音響的にはイマっぽくなってると思うよ」。

なお、次のシングル“Emergency”も女性の興奮状態を火事に見立てたもので、そんなユーモア(?)はR師匠にも通じるか。大半の楽曲をソング・ダイナスティが手掛け、ドレイクやクリス・ブラウンを招いても自身のムードに持ち込むのが巧い。締めくくりはプリンスも取り上げたボニー・レイット“I Can't Make You Love Me”で、スムースな美意識は最後まで損なわれることがない。今作に臨むにあたって「いま俺たちは立ち上がらないといけない。R&Bという芸術が失われつつあるからね」という決意も口にするタンク。こういう作品がある限り、心配する必要は何もないだろう。

 

▼タンクの作品。

左から、2001年作『Force Of Nature』(Blackground/Virgin)、2002年作『One Man』、2007年作『Sex, Love & Pain』(共にBlackground/Universal Motown)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2011年02月18日 13:35

更新: 2011年02月18日 13:35

ソース: bounce 328号 (2010年12月25日発行)

文/出嶌孝次

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