MONOBRIGHT 『COME TOGETHER/DANCING BABE』
[ interview ]
姉さん女房=ヒダカトオルとのウェディング・ソングを高らかに歌い上げたミニ・アルバム『淫ビテーション e.p,』より2か月を待たずに届けられたMONOBRIGHTの新作は、初の両A面シングル『COME TOGETHER/DANCING BABE』。スタジアム級のスケール感を持つ前者はサッカー番組のイメージソングに、軽やかなカリビアン・ビートが踊る後者は映画「婚前特急」の主題歌に起用されているが、残る2曲も含めた全4曲、ヴァラエティーに富みながらも彼ららしいエッジとポピュラリティーを備えた仕上がりだ。桃野陽介(ヴォーカル/ギター/キーボード)いわく「士気が上がる」という本作について、メンバー全員に話を訊いた。
原始的に音を楽しむ
――今回は初の両A面シングルということで。とは言え、前作の『淫ビテーション e.p.』と合わせると合計10曲。もうアルバムが出来るほどの新曲を出しまくりですが(笑)。
桃野「そうですね(笑)」
――表題の2曲にはタイアップがついてますけども、両方ともそのタイアップありきで制作されたんですか?
ヒダカトオル(ヴォーカル/ギター/キーボード)「そうですね。ありがたいことに、両方ともわれわれにオーダーをいただいて(笑)」
――1曲ずつお訊きしますが、まず“COME TOGETHER”のほうは、もう〈サッカー応援ソング〉にぴったりなスケール感や、スタジアム感がある楽曲ですね。
桃野「もともと僕とタッキー(瀧谷翼、ドラムス)はサッカーもやってたんで」
ヒダカ「いちばんサッカー部っぽくない二人がね(笑)」
――はは。否定はしませんが(笑)。
桃野「(笑)なもんで、そういう〈スポーツ心〉みたいな気持ちになって作りましたね。みんなそれぞれ部活やってたんですけど、僕はサッカーだったんで、サッカーってどうやったらテンションがアガるかなっていうのを考えましたね。そうしたら〈ウォー・ウォー♪〉っていう」
――シンガロング的な。
桃野「そうですね。いまはメンバー、スポーツはやってないし、かなり探りましたけどね」
――具体的に挙がった曲はあります?
桃野「パッと浮かんだのは、FIFAの公式ソングになってたブラーの“Song 2”とか。〈フゥフゥ〉のところでみんなアガってるなとか。そういう〈フゥ〉とか〈ウォウ〉とかっていうものだなって思いました。言葉っていうよりも、獣じゃないですけど、みんなで音を楽しむっていうか、士気を上げてく感じ。そういう原始的な要素を入れたいなって」
――ツイン・ヴォーカルというのもまたいいですよね。いまのMONOBRIGHT感が出ていて。
桃野「今回のシングルは、この曲をきっかけにみんなのテイストを混ぜこぜにしたいなっていうのはあったんで。だから僕が考えたメロディーをヒダカさんが歌って、ヒダカさんが考えたメロディーを僕が歌うみたいな」
――“COME TOGETHER”のなかの、桃野さんとヒダカさん以外の皆さんのアイデアはどういったところなんですか?
ヒダカ「今回桃野さんが持ってきた感じがザ・フーっぽかったんで、松下さんと出口さんには〈ちょっと60sな感じにしてくれ〉と発注して。タッキーにはね、キース・ムーンばりのドラミングを」
――リズム隊がパワフルな一方で、ギターはすごく歌ってますよね。
松下省伍(ギター)「ヴァイオリン風に鳴ってるような音を再現しつつ、イントロとかは別に主メロみたいなのを入れてもよかったんですけど、あえてコード感で押すのが逆にいま、あまりないしカッコいいんじゃないかなと思って。タッキーのドラムもバタバタやってることですし。音が高いところでずっとヒラヒラやってるのとか、それをもうちょっとイマ風っていったらあれですけど、いなたすぎないように」
ヒダカ「ピート・タウンゼントしてましたね」
――音がすごくキラキラしていて。
松下「そうですね、そっち担当だったんで。ソロも今回は桃野さんに任せて。男らしいソロで」
ヒダカ「2音くらいしか出してなくて、ずっとチョーキングしてるだけ。ソロと言っていいのか(笑)」
桃野「ギターを始めたばかりの人でもできる(笑)」
――(笑)そして、力強いサビに向かっていくような仕上がりですね。
桃野「〈ウォー・ウォー・ウォー♪〉っていうのをやっぱり届けたいっていうか、みんなで歌いたいなっていう曲だったんで。とにかく〈ウォーウォー〉言うっていう」
松下「レコーディングもみんなで何回か重ねて、人数感を出して」
ヒダカ「寂しかったよね、実際は4~5人しかいないから。4~5回歌ったもん(笑)」
松下「けっこう大勢な感じにならなくて」
――瀧谷さんも歌ったんですよね? ここまで発言がゼロですが……(笑)。
ヒダカ「曲についてなにか、がんばったポイントとか。ドラムの聴きどころがあれば」
瀧谷翼(ドラムス)「いままでにないって感じで、キース・ムーンをめざしてやりました」
――練習しました?
瀧谷「練習はあんまり……」
ヒダカ「しようよ! そこはしようよ(笑)」
松下「でも、音を聴いたりとかはしたんじゃないの?」
瀧谷「音の研究はしました」
ヒダカ「でも練習はしない(笑)」
――(笑)では、ベースはいかがですか?
出口博之(ベース)「ベース的には、それこそザ・フーのジョン・エントウィッスルの音作りだったりとかフレージングだったりとかを研究しました」
ヒダカ「ジョン・エントウィッスルの音ってほとんど聴こえないんだよね」
出口「かなり歪んでて。ベースっていうよりは、ギターのほうに立ち位置が近い感じの音なんで。めちゃくちゃうまいんですけどね」
松下「超テヌート」
出口「すごいよね。そういうことをいまの時代でやってる人って、知ってる限りではあまり多くなくて、そこを思いっきり自分がいってやろうって考えながらやりました。ドラムとのコンビネーションの取り方も合っているようで実は合っていなかったりとか、合ってないようでいて実は合っていたりっていう、そういうおもしろさがこの曲ではあるのかなって思います。そこも含めて60年代だったりとか、初期衝動的なバンドの勢いがうまく出てるかな。そこがスポーツの勢いだったりとかそういうところに繋がってくるのかなっていう感じはしますね」
――そういうそれぞれのテイストが混ざった感じを出したかった?
桃野「そうですね。士気を上げるっていうか、歌詞もストレートに〈燃やせ〉とか、サッカーの熱血な感じでやりたいなっていうのがあったんで」
ヒダカ「MONOBRIGHTもそうだったけど、最近はキレイに録るバンドが多いんで、あえてグシャって録るっていうイメージですよね。それこそ、さっきのジョン・エントウィッスルのベース、聴こえないじゃん、っていうぐらいでいいんじゃないかって」
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