INTERVIEW(3)――轟音と哀愁
轟音と哀愁
――次は3曲目の“見たか”。作曲はヒダカさんですね。私、音の質感がすごくカッコいいなあと思いました。
桃野「完全にアメリカのインディーズの」
ヒダカ「あえて音悪くしつつの」
――そうですよね。なので、ちょっと懐かしい感じがしました。
ヒダカ「90年代から2000年代初頭くらいまでの、ペイヴメント風の音の悪さ。この曲はベースがリードを取ってギターがリズムを出してるっていう、いつもと逆のことをやってる。それで質感もちょっと違う感じだと思うんですけど。USインディー風な、そういう実験ですね。たぶんMONOBRIGHTならできるだろうと。いつもイギリスな感じだったのでたまにはアメリカで」
――(笑)ダークですけど、すごくパワーのある楽曲だな、と。
桃野「僕もアメリカのインディーズだったりゲット・アップ・キッズとかサニー・デイ・リアル・エステイトとか好きだったんで、そういうニュアンスをMONOBRIGHTでもできたらなっていう気持ちはあったんですけど、僕がそういう楽曲を作れなかった部分もあって。そこに、ヒダカさんがちょうどそういう曲を持ってきてくれたっていうのはあります」
ヒダカ「いままでのMONOBRIGHTのリズム隊から考えると、だいぶ手数少ないんだよね。ハットも8でいくところ4でいいみたいなね。そのハマりが意外とよかった感じは」
――ニュアンスで聴かせるみたいな。
ヒダカ「でーさんがいちばんの聴きどころだと思います」
松下「作ったときも何回か合わせながらやってて、でーさんがいろいろ弾きはじめて、それ押しでいこうよみたいな感じで。それが一つ決まったら、あとはリズムをこうしようとかすんなり決まった」
ヒダカ「でーさん大活躍の巻」
出口「ですね(笑)。僕、この曲すごい好きです」
ヒダカ「嬉々として弾いてたもんね。PVの俺みたいにずっと半笑いだった(笑)」
出口「曲は暗いのに(笑)」
――確かに男前なベースラインですよね。
出口「ヒダカさんの作るメロディーの印象が、この曲のベースのラインに全部入ってるのかなっていう感じはしますね。どんなに明るくても、ヒダカさんの作るメロディーって4割ぐらいは影があるなって思うんですよ。喜怒哀楽で言ったら哀の部分なんですけど。そういう部分がどんなメロディーのなかにも顔を出してるなっていう感じがすごいしてて」
ヒダカ「7th感なんだろね、いなたくない7th」
出口「そうですね。最初にベースで弾いてるアルペジオも構成音は7th入ってるから、メロディーに呼ばれて出てきたフレーズっていう感じですね。それがうまいくらいにハマって。さっき話に出ていたアメリカのインディー感は僕もすごい好きで。エモさって言ったら話は簡単に終わっちゃうんですけど、そういう、いままでのMONOBRIGHTでもできるようでできなかった部分を5人になったMONOBRIGHTでうまく出せたかなっていう感じはしますね。轟音なのになんか哀しいというか、キュンとくる。そういうところがすごくいいなーって」
ヒダカ「そこが日本人の琴線に触れてる感じはありますよね。ベックにしろ、ペイヴメントにしろ」
出口「それこそ北海道の先輩のbloodthirsty butchersとか」
ヒダカ「怒髪天もそうだしね。怒髪天に至っては、たまに7thすぎて演歌っぽいけど(笑)」
出口「まっつんのギターとの掛け合いもすごく相性がよくて。いろいろ考えていくと北海道っぽいよねっていう話にもなって」
松下「eastern youthみたいな、湿った7th感なんですけど。奥行きみたいなところ。ここのアレンジはすぐ決まった。はい、チューニング落として、みたいな」
出口「これだねーって(笑)」
―― 一方で、歌詞は真逆に振り切ってますよね。
桃野「そうですね。今年に入ってから作ってる曲は、明るい曲にはちょっと影のある歌詞にしようと思って、今回はちょっとふてぶてしいっていうか、生意気な詞を書こうと思って」
――生意気というか……今後のMONOBRIGHTのあり方というか、宣言的な。
ヒダカ「三十路が見えてきましたからね」
桃野「あと2年。なんで、そういう自分らの等身大の意味も込めて、サビでは〈30代になってもあっけらかんとしよう〉みたいな。意外とのんびりした詞」
ヒダカ「歳を取っちゃってやだってことじゃ、全然ないんだよね」
桃野「それは全然ないですね」
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