インタビュー

大橋トリオ 『FAKE BOOK II』

 

大橋トリオ_特集カバー

 

 

誰が歌っているか

 

宇多田ヒカル、マイケル・ジャクソン、海援隊など個性豊かな楽曲の数々を、淡く柔らかな歌世界へと見事に染め上げてみせた大橋トリオのカヴァー・アルバム『FAKE BOOK』。オリジナルの強烈すぎるイメージをさらりと、しかしガラリと覆しながら再構築したあの癒しの荒技は、まさにカヴァーの醍醐味と言えるものだったと思う。その大橋トリオのカヴァー第2弾アルバム『FAKE BOOK II』が完成した。多くの人が期待するのはおそらく、前回を上回る〈意外な選曲〉に違いない。だが「その期待感がどうもしっくりこなかった」と、彼は言う。

「僕自身、そろそろまたカヴァーをやりたいなと思ってたんです。そうすると、周り的には話題性のある曲を求めるじゃないですか。でもその期待感がどうもしっくりこなくて(笑)。前回の“贈る言葉”とかはホント、偶然出来たものだから。それに、話題性とかそういうことじゃなくて、ミュージシャンとしておもしろいことをしたいと思うんですよね」。

そのためにも、今回は話題性を優先した選曲ではなく、「みんなが知っている曲であることと、そのなかで自分がやってみたいなと思う曲」という視点で楽曲をセレクト。シャーデー、ママス&パパス、デズリー、タヒチ80、スティーヴィー・ワンダー、アリシア・キーズをはじめ、60年代から2000年代までのさまざまなジャンルの楽曲のなかから、「いろいろ探していくなかで、カヴァーをしてみたいなぁと思って選んだ」という全8曲は、気が付くとすべて洋楽になっていた。

「前回は、いかに原曲と違うアレンジにするかっていうのをすごい意識したんですよ。でも今回は、それはもういいやって。実際、カヴァー・アルバムを聴く時に、声だけこのアーティストで聴きたいなっていう場合があるじゃないですか。今回そういうアーティストの曲ばっかりを選んだわけじゃないんですけど、〈誰が歌ってるか〉というカヴァーもありかなって。何曲かはガラッとアレンジを変えてるから、まぁ、意地張って全部そうすることもないかなって」。

例えば、ジャズやソウルを核に持つという音楽的共通項があるシャーデーの“Kiss Of Life”。そして、大橋のフェイヴァリット曲でもあるスティーヴィー・ワンダーの“My Cherie Amour”。このあたりはまさに奇抜なアレンジということはなく、〈大橋トリオが歌う〉という部分にフォーカスされた楽曲と言えるだろう。

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▼大橋トリオのオリジナル・アルバム

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掲載: 2011年03月09日 18:01

更新: 2011年03月09日 18:47

インタヴュー・文/早川加奈子