LONG REVIEW――大橋トリオ 『FAKE BOOK II』
前作『FAKE BOOK』は洋邦取り混ぜた選曲でしたが、今回の〈II〉では60~2000年代の〈洋楽オンリー〉をカヴァー。収録は今回もこぢんまりと8曲。
まずは、アメリカン・スケールのロック・チューンから夢見心地なメロディーラインのチャームをぎゅっと絞り出したエアロスミス“Angel”を筆頭に、原曲の煌びやかさを控えめにしながらも温かみのあるメロディー感とときめき感をしっかりと耳に残すシャーデー“Kiss Of Life”、カリフォルニアの青い空……というよりNYのジャズ・クラブが似合うアーバンな風合いに衣替えしたママス&パパス“California Dreamin'”、カントリー風味を忍ばせたデズリー“You Gotta Be”。
後半は、オリジナルが持つ青春の躍動感をファンキーなアコースティック・サウンドに置き換えたタヒチ80“Heartbeat”、スティーヴィー・ワンダーの名曲をラフで気取りのないジャズ・テイストで再現した“My Cherie Amour”、グラマラスなオリジナルにスウィンギーなジャズ・アレンジを施したデヴィッド・ボウイ“The Man Who Sold The World”、アリシア・キーズの名ソウル・バラードにジャズのエッセンスをほんのりと加えた“If I Ain't Got You”といった具合に、ちょっぴり隠し味を加えてみた、もしくは下味に工夫を凝らした、といった〈ひと手間〉をかけただけで、いずれの曲も目から鱗の風味に。いわゆる、何度も賞味したくなる味ってことで。