INTERVIEW(3)――自分たちのスキルをフルスロットルで注ぎ込んだ
自分たちのスキルをフルスロットルで注ぎ込んだ
――あとリズム隊で言うと、“容疑者”みたいに60sポップスの感じがある曲とか。“ページ1”みたいなキラキラした感じとか、ああいう明るく弾むポップ感みたいなのはいままであまりなかったと思うし。ドラマーは楽しいんじゃないですか。
対馬「そのぶん難しいです(笑)。“容疑者”はちょっと難しかった記憶がある。強くもなく弱くもなく、心地良いリズムで。ギターの間があるぶん、ドラムが目立つので。歌と共に流れていって、どれだけ心地良くいられるかというのはすごく意識してプレイしましたね。いろいろ探しながら」
坂倉「かといって、弾む感じでいくとふわふわしちゃうし。毎回思いますけど、特に今回は、俺ヘタクソだなって思わされましたね(笑)。本当にいいグルーヴ感を出すことに神経を使ったかな」
光村「今回のアルバムは、本当にみんな遠慮がなかったんで。誰かが良くなっていくと、そこについて行くというか。良くなった人がほかの人を引っ張り上げたりとか、そういうことがすごく多くて」
坂倉「その曲のグルーヴが、どんどん見えてくるんですよ」
光村「相乗効果で。自分たちのスキルをフルスロットルで注ぎ込んだ感じがあって。相当がんばってもらいました」
――現場では、かなり容赦のない言葉も飛び交ったり?
光村「いやーもう、容赦ないですよ。集中砲火みたいな時とか。エンジニアも含めて(笑)」
坂倉「俺、一度岡野さんに言われたの。トークバックで。〈そこどうなってるの?〉って。〈いや、こうなってます〉って言ったら、〈だったら、合うはずだよね。ヘタだから〉って、ズバッと(笑)。その通りです、と思いながら」
――ナニクソって、余計に燃えるでしょう。やってやろうじゃんと。
対馬「ナニクソって思ったんだ?」
坂倉「思うよ」
対馬「あんまり表に出さないもんね、坂倉は」
――話を聞いてると実に生々しいというか、楽しさと緊張感と、どっちもすごく高い状況だったのかなと。メンタルも含めて。
光村「勢いで録ってるからこそ、誰かが立ち止まってしまうとね。バンドなんで、きちんと引っ張り上げるところに価値があると思うし」
――ところで“ロデオ”を1曲目にした理由は?
光村「僕と対馬くんのなかで、スタジオで“ロデオ”の原型を作ってて、〈これは久しぶりにシビれるやつがきたね、アルバムの1曲目だね〉って言ってて。周りがどんなに反対しても二人で押し切ろうっていう、密約を交わして(笑)」
対馬「いま入れないと、もうないような気がしたんで。いま出来上がったこの感覚を、産地直送で届けたくてしょうがなくて」
――変わった曲ですよね。何のリズムかよくわからないし(笑)。
光村「僕はもともとメキシコのマリアッチみたいな、ちょっとヘンテコな、〈いま、そこにフォーカスするか?〉っていうところにフォーカスするのがすごい好きで。“ロデオ”は僕のなかで、4つか5つぐらいの曲に対するオマージュというか。マリアッチが“My Sharona”をやったらどうなるかな?っていう、基本はそれで。それまでも遠慮のない曲作り生活が続いてたから、そういうめちゃくちゃなことを言っても、まかり通る雰囲気があって。楽しかったですよ。今回、いちばん盛り上がった。岡野さんが〈一生聴く〉って言ってました(笑)」
対馬「めっちゃお気に入りだもんな、岡野さん」
光村「イントロでおっさんの掛け声みたいなのが入ってるんですけど、〈ハッ!〉っていう。気付いたら勝手に入れてて(笑)。俺らがほかの作業をしてる時にこっそりやってたらしくて。何十通りも録って〈いちばんいいのを選んだ〉とか言って。相当力入ってますよ。こういう、ロバート・ロドリゲス的世界というか、〈デスペラード〉みたいなものは僕も岡野さんもすごいツボで。あとはマカロニ・ウエスタンとか、そのへんがたまらないという話をずっとしてるんですけど。ムチの音も入れてるんですよ、“ロデオ”だから。それも岡野さん、すごいこだわりようで」
対馬「SM嬢、呼んでくるかって」
光村「ムチの音だけで、2日ぐらい跨いでた(笑)。ミックスの時も、オケとか歌のことは何にも言わずに、〈ムチのレヴェルをもっと上げて〉とか言って」
――素晴らしい(笑)。でもそういうディテールに出ますよね。曲のリアリティーって。
光村「そう。〈こうあるべき〉とかじゃなくて、自分たちのなかの、ありのままを出していったら、相乗効果でいろんな人が力を貸してくれたし。いろんな人を巻き込んでいけるんだなってすごいわかったし。あっという間に終わっちゃいましたね、レコーディングは。楽しくて」
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