インタビュー

LONG REVIEW――NICO Touches the Walls 『PASSENGER』

 

NICO Touches the Walls_J

狼の遠吠え、馬の蹄の音といななき、そして勝ち鬨の声――映画「トゥルー・グリット」のような西部劇をイメージさせるSEを据えた“ロデオ”は、ツイン・ギターの非西欧的な音階のリフと、シンコペーションを利かせたビートを従えて高速で走り出す。

冒頭にSEを入れて聴き手を引き込むという、アルバム作品ならではの手法からも窺えるとおり、はたして本作は〈アルバムだからできること〉に意識的である。それは起承転結によるドラマ性をもたらす曲の並びやよく練られたリズム・アレンジ、楽曲単位では逆回転させたギターやピアノ、弦楽隊を入れた“君だけ”などに特徴的だ。

そして昨年はライヴに明け暮れた彼らだけに、アルバムとしての作り込みに、バンドのダイナミックなエネルギーを掛け合わせている。楽曲で綴られる感情の流れを、メリハリのある演奏で盛り上げていく手際も鮮やかだ。コール&レスポンスを大胆に採り入れた“友情讃歌”も、ライヴを意識して作られたものだろう。

“マトリョーシカ”“サドンデスゲーム”といった終盤の曲では荒涼とした風景や心情が描かれているが、ラストの表題曲では〈生きること、歌うこと〉を肯定している。そう、〈夢〉を歌う姿が印象的だった前作に対して、本作では目の前の現実と、そこに生きる〈旅行者〉として感じたものを映しているのだ。

 

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掲載: 2011年04月06日 18:02

更新: 2011年04月06日 18:25

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