LONG REVIEW――ROCK‘A'TRENCH 『日々のぬくもりだけで』
ROCK'A'TRENCHの通算9作目となるシングル“日々のぬくもりだけで”。のっけからの〈ドンドン、タ(ット)、ドンドン、タ……〉と、ゆったりとながらも躍動する魂を表しているかのような力強いビートが刻まれていく様を耳にし、思い出したのはジョン・レノン“Give Peace A Chance”だ(聴く人によってはクイーン“We Will Rock You”かもだが)。ビートルズ解散へのカウントダウンが始まり、ベトナム戦争が激化の途を辿っていた69年夏に発表された初めてのソロ・シングルでジョンは、あれやこれやの主義主張も大層なことだけど、とにかく〈平和〉というものにチャンスをくれよ!と歌っていた。
“日々のぬくもりだけで”におけるメッセージも、それと同じように(など言われるのはおこがましいと、むしろ本人たちが言いそうだが)、〈愛してる/ただそれだけを君に/伝えるよ/一生かかっても/それでもそばにいてくれないか〉と究極の願いをシンプルに歌った、ストレートこのうえないラヴソングなのである。そして、バックの〈ドンドン、タ(ット)、ドンドン、タ……〉は、どんなに表情豊かで麗しいメロディーラインよりも雄弁に、放たれる言葉の誠実さを伝えてくれているように思うのだ。飾り気を取り払い、ここにまた新たな名曲を生み出したROCK'A'TRENCHにタフ味が増したのは、一聴すればあきらかだろう。
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