インタビュー

Heavenstamp 『Stand by you - E.P. + REMIXES』

 

Heavenstamp_特集カバー

 

[ interview ]

〈ディスコ・パンク〉〈シューゲイズ〉〈シンフォニック〉を旗印に掲げ、昨年秋に『Hype - E.P. + REMIXES』でデビューした男女混成の4人組バンド、Heavenstamp。80年代の憂鬱、90年代の狂騒、2000年代の混沌――UKロックが孕んできた時代ごとの空気をみずからのダンス・グルーヴに纏わせ、特大スケールのロック・サウンドとして提示する彼らが、メジャー移籍作となるEP『Stand by you - E.P. + REMIXES』を完成させた。

無名時代の彼らに絶賛の声を寄せたラッセル・リサック(ブロック・パーティ)は、前作に続いて本作にも共同プロデューサーとして参加。さらに、このバンドにとっては異色となる〈3分間ポップス〉=“Pops”においては楽曲の共作に加えてリミックスも担当している。

一見すると、クールな佇まいの4人。その素顔に迫るべく行ったインタヴューで判明したのは、どうやら彼らにとっての楽曲制作とは、ほぼすべての作曲を手掛けるTomoya.S(ギター)の妄想を音像化していく作業を指すらしい、ということ。そうした具体的すぎるイメージをもとにオリジナルの4曲を掘り下げつつ、80KIDZ、Pepe Californiaらも手掛けた〈リミックス曲の全曲解説〉や〈ラッセルが語る“Pops”の魅力〉などを通じて、さまざまな方向から全7曲を解体してみた。

 

この曲だったら人を振り向かせられる

 

――前作『Hype - E.P. + REMIXES』はライヴ感と初期衝動を詰め込むことをテーマにした作品ということでしたが、今回はそういったテーマはありましたか?

Tomoya「はい。今回はメジャー・デビュー作ということもあって、より幅広い人に振り向いてもらえるチャンスだということは自覚しているので、そういった状況にいちばん相応しい形で、完成度の高いものを追求する、っていうところがテーマでした。どキャッチーなイントロだったり、メロディーだったり、演奏だったりで、聴く人を鷲掴みにするような作品にしたかったっていう」

――タイトル曲の“Stand by you”のイントロのギター・リフやサビのメロディーは、確かにすごく耳に残りますね。その、〈Heavenstampなりのキャッチーさ〉を標榜する曲として、この曲を選んだのはなぜですか?

Tomoya「初めてのライヴからずっと演ってきている曲っていうのもあるんですけど、このメンバーで初めてリハーサル入ったときにも手応えがあったんですよ。このバンドに人生かけて、力を注いでやっていこうって、みんなでそう思えるきっかけになった曲というか……Heavenstampのいまの状況があるのは、この曲のもとに人が集まってきたからっていうのは間違いなくあると思っていて。この曲だったら人を振り向かせられるっていう、そういう自信はありますね」

Mika(ドラムス)「よく覚えてる。初めて演ったときのこと」

――いかがでした?

Mika「まだ完成形ではなかったんだけど、みんなで何回か演ってるうちに、自然と〈これ、いいね!〉っていう雰囲気になって」

Tomoya「新しいことにチャレンジしつつ、確かな手応えを得た瞬間だったと思うんですね。それまでみんな、ポスト・パンクな曲って演ったことがなかったので」

――作曲者としても、従来とは違う方向性にチャレンジした曲だったと?

Tomoya「そうですね。作曲はほとんど自分で、Sallyが作詞をするんですけども、この曲だけは詞も曲も共作なんですよ。初めてそういう試みをしたっていうのもありますね」

――それは意識的に?

Tomoya「Heavenstampを結成して、初めてライヴをやることになって、〈じゃあどういうバンドをやっていこうか?〉って考えたときに、ジャンルで言うとディスコ・パンクやポスト・パンク、そういう音楽を攻めていきたいっていう気持ちがあったので、そういう曲を1曲作ったんですね。で、その曲をSallyに聴いてもらってたら、これがライヴの1曲目だとして、それに続く曲――イントロで〈おっ!〉て思わせられるような曲をもう1曲作ってみようっていう話になって、それから数時間で原型がほとんど完成したんです」

――ちなみに、その最初に出来ていた曲というのは?

Tomoya「まだ出してないんですけど、“My doll”っていうディスコ・パンクな曲ですね。やっぱり4つ打ちで、踊れる曲なんですけど」

――“Stand by you”は、そのグルーヴをスムースに継承する曲として作り上げたもの?

Tomoya「そうですね。でも、よりキャッチーな曲っていう。“My doll”はけっこう尖った曲で、どキャッチーとは言えなかったんだと思うんですよね。だからこそ、もうこれは初ライヴもやってない状態での妄想なんですけど、まずは1曲目でインパクトを残して、そのあとにキャッチーな曲で〈バシッ!〉とお客さんを鷲掴み、っていう気持ちがたぶんあったんですね」

 

〈フジロック〉の〈RED MARQUEE〉で鷲掴み、みたいなイメージ

 

――ライヴの流れを自分たちで想像しながら作ってたんですね。

Sally#Cinnamon(ヴォーカル/ギター)「はい」

Tomoya「あと、“Stand by you”は、〈フジロック〉の〈RED MARQUEE〉みたいなイメージがありますかね」

Sally「うんうんうん」

Tomoya「〈知らないけど、ディスコ・パンクのバンドらしい〉ぐらいの知識の人が観たときに鷲掴みできるような、っていう。そこまで具体的にイメージしてましたね」

――ああ、〈RED MARQUEE〉は会場入り口のゲートからメインの〈GREEN STAGE〉に向かう途中の道でも音が聴こえますし、フラッと立ち寄る人が多いかも。

Tomoya「はい。発見が多いステージですよね」

Sally「あと、〈OASIS〉(〈RED MARQUEE〉と密接するフードエリア)でご飯食べてる人たちとかも観に来たり」

Tomoya「うん。なんか始まったな、ディスコ・パンクのバンドっぽいな、って入ってきた人が、2曲目でこの曲がきて、〈ウォォォ~!!〉ってなるような」

――ホントに具体的ですね(笑)。さすが、前回のインタヴューのときに今後の目標として〈フジロック〉と〈グラストンベリー〉に出たい、とおっしゃってただけあります。

Tomoya「バンドを組むときにメンバーを誘う基準として、〈フジロック〉に行ったことがある人、というのがありますから(笑)」

Mika「そういう縛りがあったんだ(笑)」

Tomoya「うん。〈フジロック〉を知らない人と〈フジロック〉はめざせない」

――(笑)Shikichin(ベース)さんは、この曲を始めて聴いたときいかがでした?

Shikichin「……あの、スラップ……(と言いながら、弾き真似をする)」

――あ、冒頭のスラップ・ギターですか?

Shikichin「そうですね。あのフレーズからすごく印象的な曲で、初ライヴで演ったときも、感触はすごくいい感じだったと思います」

 

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掲載: 2011年05月11日 18:02

インタヴュー・文/土田真弓