インタビュー

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND 『夢の跡』

 

OAU_特集カバー

 

[ interview ]

これから紹介するTOSHI-LOWの言葉は、ふたつのインタヴューを組み合わせたものだ。最初の取材は3月2日、そして2回目は5月16日。東日本大震災の発生に伴ってOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下、OAU)の新作『夢の跡』のリリースが延期となり、発言の内容に時差が生じたこと。そして何よりも、TOSHI-LOW自身の内面が〈3.11〉を境に大きく変化したこと。それらを理由にTOSHI-LOWからの要望があり、今回2度目の取材を行うことになった。ここではあえてふたつの内容を並列することで、〈その間に何が起きたのか〉をよりリアルに感じてもらいたい。誰もが心に強い衝撃を受けた〈あの日〉以降、変わったものは何で、変わらなかったものは何だったのか。まずは3月2日をプレイバックするところから始めよう。

 

【3月2日(1)】――感じたことに対してもっと素直に

 

――これがアルバムの最初のインタヴューだそうですね。こっちが緊張しますけども。

「まだ客観的に見れてないので、逆に感想を聞かせていただきたい部分もあるというか」

――柔らかく包み込まれるような、良い意味でさらりと聴ける作品でした。例えばファースト・アルバム『OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND』(2006年)の頃はもっとジャム・セッション感が強かったように思うし、メンバーがぶつかり合うテンションの高さを感じていたんですけど、そこがすごく合ってきたというか、馴染んだ感じはすごくしましたね。ファーストからセカンドの『New Acoustic Tale』(2009年)、そして今作と並べて聴いた感想としては。

「ああ。それは嬉しい」

――ちなみに5年前のファーストの時点でインタヴューさせてもらったときの原稿を読み返してみたんですけど、TOSHI-LOWさんがそのなかでOAUが短期的なユニットではないことを説明して、「バンドとしてせっかく生まれたからには大人になっていきたい。そのためには時間も必要だし、むしろ年をとってからのほうが違和感がない、いぶし銀のカッコよさが出る音楽だと思うので」と言ってるんですよ。

「そんなこと言ってました? 偉そうですね(笑)」

――でもそれは本当にそうだなと思いましたよ、今回の音を聴いて。バンドが生まれてからの時間の経過がちゃんと音に入っていると思いましたし。

「特に、時間が必要な音楽なのかなと思うんですよね。こういうところから入った人はいいんでしょうけど、僕らみたいにガリッとした音のバンドから入ってしまうと……〈同じギターでしょ?〉と思われると思うんですね、楽器をやってない方は。でも、すべてが違うんですよ。ビックリするぐらい。それでやっと、型に当てはめるのではなくて、自分たちのもともと持っている雰囲気にやっと歩み寄れるようになれたのかな、と思うんですけども」

――OAUのメンバーは、グループとして活動するとき以外は、いつもいっしょなわけでもないですよね。

「うちの4人は、それじゃないほう(BRAHMAN)もあるので、ほぼいっしょにいますけど。ただ、前までは、ちょっとタームが空いてしまうと(演奏の呼吸に)ズレが出たりとか、BRAHMANの活動が多くなったときにOVERGROUNDのリハに入ったりすると、MARTIN(ヴォーカル/ヴァイオリン/アコースティック・ギター)が嫌な顔をしてたりしてんですけど(笑)。弾き方のテンションが変わってしまうので、そういうものを持ち込んでしまっていたらしくて。いまは何も言われなくなったので、スッと入ってこれるようになったのかなとは思います」

――振り返って、1年半前の前作『New Acoustic Tale』はどんな作品だったと思います?

「なんか、あそこでヒントがいっぱいあった気がするんですよ。バンド6人だと、はじめはどうしても平等に分けなきゃいけないという、バンド感が強すぎて。でももう誰が先頭でもいいというか、別に歌がなくてもいいし、生ギターがグッと前にあってリズムが後ろに引いていてもいいし。今回の頭の曲(“夢の跡”)みたいな、歌がちょっと引いたところにあるから出る空気感というものもあるし。そういう感覚が2枚目を作っている途中で、たぶんあったと思うんですよ。そこで得たヒントをより自由に、感じることに対してもっと素直に音を並べた結果が、こういう感じなのかなと思うんですけど」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年05月25日 18:00

更新: 2011年05月25日 22:10

インタヴュー・文/宮本英夫